君のいない明日を、今日。

ピピピピ……。

携帯のアラームが、朝七時を知らせる。

「ん……」

眠たい目をこすりながらベッドから起き上がり、乱れた布団をいつものように整える。

階段を下りてリビングへ向かうと、お母さんはもう出かけたあとだった。

テーブルの上には、私のお弁当だけがぽつんと置かれている。

「……いってらっしゃい」

誰もいない部屋に、なんとなく呟いた。

洗面所で顔を洗い、制服に着替える。
髪を整えて、トースターに食パンを入れた。

チン、と音がして、焼き上がったパンにチョコクリームを塗る。

テレビをつけると、朝のニュースが流れていた。

『本日は一日を通して快晴となるでしょう』

画面の隅に表示された天気予報を、ぼんやり眺める。

ふと時計を見る。

「……あと十五分」

思ったより時間がない。

少しだけ焦りながら、椅子に座った。

「いただきます」

小さく呟いて、パンをかじる。

一人で食べる朝ごはんにも、もう慣れていた。

「……ごちそうさま」

食べ終わった食器を洗い、鞄の中を確認する。

教科書。
筆箱。
お弁当。
スマホ。
体操服。

忘れ物はない。

玄関へ向かい、靴を履こうとしたときだった。

視界の端に、何かがちらりと入った。

――折り畳み傘。

玄関の隅に置かれた、見慣れた傘。

今日は快晴。
雨なんて降るはずもない。

なのに。

「……なんとなく、ね」

自分でもよく分からないまま、それを鞄の中へ入れた。

そして、誰もいない家を振り返る。

「行ってきます」

返事はない。

それでも私は、いつものようにドアを開けた。