翌朝、熱が下がった颯太は、帰るどころか我が物顔で彩夏のベッドに寝転んでいた。「帰ってください」と言う彩夏の腕を掴み、ベッドに引きずり下ろす。至近距離で見つめられる国宝級の顔。心臓が、耳の奥でうるさく跳ねた。「やだ。俺、あの息が詰まる世界に戻りたくない。ねえ、俺をここに置いてよ。お礼に、君が欲しいもの何でもあげるから。……それとも、俺じゃ不満?」意地悪く微笑む彼の瞳の奥に、深い孤独と、執着の炎が見えた。見つかれば、彼のキャリアは終わり、自分の日常も崩壊する。分かっているのに、彼の伸ばしてきた指先が髪に触れた瞬間、紬の体から拒絶の力が抜けていく。これは恋なんて可愛いものじゃない。すべてを壊しかねない、制御不能な破滅の始まりだった。

