その青を描く ③

 食材が並んだあとで、俺が肉を網に乗せていると、白い煙がテーブルの上に落ちてきた。

「採用したことはある。ただ……、合わなかっただけだ」佐伯はそう言ってから、煙草を消して、俺が持っていたトングを貸せと顎で示した。

 代わりに俺は煙草を吸って、肉が焼かれて、皿に盛られるまで、ただ見ていた。こいつは他人任せにするのが苦手なようだけど、相手の好みはどこからか仕入れている。それが当たったから腹が立った。

「全員、女っすか」俺は吹っ掛けるつもりはなかった。佐伯はモテそうだし、そういうことも一度や二度どころか、それ以上もあったはずだ。

 そしたら佐伯は途端に嫌な顔をし、目を据えて「だから、なんだ」と言った。

「いや、別に」俺が煙草を吸っていたら、佐伯は鼻息をついて、「何が聞きたい」と声を低くした。

 そこで俺は昔のことを思い出した。全部引っくるめて、自分がここにいる意味を初めて察した。しかし、およそ五年ものあいだ、探していたのかと気づいたら、少しからかってやろうと思った。

「いや、俺が幼馴染じゃなかったら、柚月に惚れてるなぁと思って」

「ふーん……それで?」

 でも、佐伯は普通に肉を焼いていて、俺を見る目も興味を失ったようだった。

「まぁ、可愛いし、綺麗だし、スタイルもいいし……」俺は言いながら、皿に入った肉を食べた。

「それから?」佐伯はそう言って、長い肉を網の上に広げた。

「料理は最高にうまいし、お菓子なんかも器用に作るし……」飯を口に詰めながら、視線を向けると、佐伯はキッチンバサミを手にして、肉を丁寧に切り始めた。

「あとは?」

 さすがにまずいと思ったけど、引けずに、「とりあえず、食ったほうがいいっすよ……」と言って、新しいトングを手にして、肉をひっくり返した。

 佐伯は軽く頷いてから、箸を手にして、「いただきます」と言ってから、肉を食べ始めた。少し乱暴ではあるけど、所作は綺麗だし、テーブルの上に汁すら零れていなかった。

 そんな姿を見ているうちに、俺はあいつを護ることから降りてもいいと思えた。

「あいつ……柚月のこと、よろしく、おなっしゃす」

 佐伯は少し箸を止めてから、俺を見て、「時々、飯にでも誘え」と言って、すぐに「まぁ、何でもいいけど……」と言って、また箸を進めた。

「じゃあ、のちのち融資の件、相談しやっす」

 俺はそう返して、少し丁寧に飯を食った。それからは、お互い特に話はしなかったけど、帰り際に佐伯は言った。

「いつでも連絡しろ、折り返しは必ずする」

 そのとき俺は、こいつには敵わないと知った。まぁ、張り合うこともないけど……。