言いたいことだけ言って何事もなかったかのように横顔を向け澄ます彼女に、麻美子は思わず拳を握りしめ、今にも殴りかからん勢いだった。
「麻美子さん、すみません。僕、夢中になっちゃって」
突然届いた蓮の声に、何事もなかったかのようにすっと拳を背中に隠す。
「大丈夫よ。感性は人それぞれだし……私もね、ほら、気になる絵画があったから」
二人は歩幅を合わせてその場を離れていく。
けれど麻美子だけは、最後にそっと振り返り、あの嘲笑う少女へ殺意を込めた視線を叩きつけていた。
荒立った気分を変えようと、二人が次に向かったのは隣接する自然科学博物館の恐竜展だった。
展示ケースのガラスに映る自分の顔を見つめ、先ほどの激昂を必死に押し殺す。
深く呼吸を整えると、麻美子は再び「頼れる年上の女性」の顔を完璧に作り上げた。
見上げるほど巨大なティラノサウルスの骨格標本を前に、蓮は「こんなでかいのが昔いたと思うと、本当に怖いな!」と少年のように大はしゃぎしている。
麻美子も内心では言葉を失うほどワクワクしていたが、あくまで一歩引いた、母親のような落ち着いた微笑みを崩さずにいた。
『おいおい、こいつが新しい彼氏だろ。隣に並んでおいて、何を達観したようなツラをしているんだ』
明らかに違和感のある重低音の囁きに、麻美子は目を大きく開け、息を呑んでいた。
「麻美子さん、すみません。僕、夢中になっちゃって」
突然届いた蓮の声に、何事もなかったかのようにすっと拳を背中に隠す。
「大丈夫よ。感性は人それぞれだし……私もね、ほら、気になる絵画があったから」
二人は歩幅を合わせてその場を離れていく。
けれど麻美子だけは、最後にそっと振り返り、あの嘲笑う少女へ殺意を込めた視線を叩きつけていた。
荒立った気分を変えようと、二人が次に向かったのは隣接する自然科学博物館の恐竜展だった。
展示ケースのガラスに映る自分の顔を見つめ、先ほどの激昂を必死に押し殺す。
深く呼吸を整えると、麻美子は再び「頼れる年上の女性」の顔を完璧に作り上げた。
見上げるほど巨大なティラノサウルスの骨格標本を前に、蓮は「こんなでかいのが昔いたと思うと、本当に怖いな!」と少年のように大はしゃぎしている。
麻美子も内心では言葉を失うほどワクワクしていたが、あくまで一歩引いた、母親のような落ち着いた微笑みを崩さずにいた。
『おいおい、こいつが新しい彼氏だろ。隣に並んでおいて、何を達観したようなツラをしているんだ』
明らかに違和感のある重低音の囁きに、麻美子は目を大きく開け、息を呑んでいた。



