加納欄の入院 シリーズ32シーズン4

トイレを済ませ、あたしたちは病室へ戻ろうとしていた。

その時――。

廊下の先から、低い声が聞こえた。

あたしは足を止める。

苫利先輩も、同時に止まった。

曲がり角の向こう。

黒っぽい服を着た二人の男が、
声を潜めて話している。

「今月は、あんまり見込めねぇな」

…………見込めない?

病院でする会話にしては、妙な言い方だった。

「今日、新しいの入ってきたよ」

もう一人の男が答える。

「骨折だとかで」

新しいの?

患者のことを、そんなふうに呼ぶ?

しかも――。

『見込めない』という話の直後に、

『新しいのが入ってきた』

まるで、何かの数を数えているみたいだった。

あたしと苫利先輩は顔を見合わせる。

今日、新しく入院した骨折患者。

…………苫利先輩だ。