普通の関係ではありませんが、私達は仲良しです。



蘭々さんから連絡があった。

サロンを開いたから、遊びに来てね♡、と。


蘭々さんはヌードモデルを辞めて、サロンを開いた。

ブランデーにワインの高級酒、料理を楽しみながら、おしゃべりする社交場。

お客様は画壇関係者や、文化人が多いみたい。


蘭々さんと知り合ったのは、美大生の時だった。

私はデッサンサークルに入っていた。モデルとしてやって来た蘭々さんを、私は一目で気に入り、絵のモデルをお願いして、私の芸術の女神、ミューズになった。


美大は休学したけど、復学せずに退学。

名門美大を中退した。

大学三年生の時、婚約者だった、伊吹さんの子を妊娠した。

一人目は男の子で、充葉と。

充葉は鳳家の跡取り。

それから、なんやかんやあり、二人目も産んだ。

二人目も男の子で、元貴と。

元貴は私の実家、白山家の跡取りに。


私の兄夫婦は、自然妊娠では子供が出来ず、不妊治療をしたが、それでも授からなかった。

父からもう一人、子供を産んでくれと言われた。

要約すると、白山家の跡取りを産め、と。

出産を終えたばかりの病室で、言われた。


人の腹をなんだと、思ってるのやら……。

私としては、弟が跡取り問題を抱えるのは、可哀想だったのと、兄の妻である美妃さんが兄と離婚させられて、路頭に迷うのではと危惧した。

兄には後妻を娶らせて、また子供を作らせるのでは?


白山銀行の頭取である、私の父ならやりかねない。

冷酷で恐ろしい人だ。

良く言えば、判断力と決断力が優れてる。


銀行の頭取としては良いが、父親としてはどうかと思う。

そんな父の元で育ったので、慣れてはいた。


元貴は兄夫婦に育ててもらう事に。

白山家に養子に出した。

美妃さんになら、我が子を任せられる。


兄と美妃さんは、高校の同級生だった。

高校から付き合ってたが、父と母は交際に反対した。

兄には家柄の良い、良家のお嬢様と結婚させたがった。

美妃さんの両親は離婚していて、女手一つで育てられた。

兄は反対を押し切り、美妃さんと結婚した。

結婚式の招待客は、父の仕事関係者ばかりだった。


愛し合って結婚した二人なのに、子宝に恵まれなかった。

神様は不公平だ。



夫の伊吹さんは、鳳不動産にお勤めである。

私は絵の仕事をしてるので、充葉のお世話はベビーシッターさんに任せていた。

伊吹さんは鳳家の次男で、嫡男のお義兄さんは結婚してるが、子供を授からなかった。

なので、弟である伊吹さんが、跡取りを作った。

鳳家は鳳不動産の創業者一族で、私の父が頭取を務める白山銀行とは、長い付き合いが……。

大学二年生で私が誕生日を迎えた頃、父からお見合いするように言われ、私は伊吹さんと料亭でお見合いした。


幼馴染の奏矢は、音大を卒業した。

プロのチェリストとして、コンサートを開催しながら、子供達に教えている。


伊吹さんが雇ってくれた、ベビーシッターの菖蒲さんは、幼稚園教諭免許とベビーシッター資格を持っていて、感じの良い人だ。

充葉の食事のお世話から、着替えから入浴。

寝かし付けまで、してくれた。


伊吹さんと私、充葉の家族三人でマンションで暮らしていて、私はアトリエを借りていて、そこで絵を描いて作業してる。

祖父が私のスポンサーで、お金を出してくれた。

祖父は頭取を早々に引退して、長年の夢だった、自身で収集した、コレクションを展示する、美術館を建設して、現在は館長を務めていた。


「白山君、じゃないか。」

蘭々さんのサロンに初めて行って、何を注文しようか、悩んでると、そう声を掛けられた。

「高嶺先生っ!ご無沙汰してます!」

椅子から立ち上がり、挨拶した。

高嶺先生は私が中退した美大の卒業生で、客員教授を務めていて、何度か授業を受けた事があった。

「……覚えて下さってたとは、光栄です。」

「君の作品は女性的で繊細。色使いも素晴らしく、印象に残っていたからね。」

「恐縮です……。」

「絵は続けてるのかい?」

「細々とですが、続けています。」

「それが聞けて良かった。また、機会があれば絵を見せてくれたまえ。」

「……はい。」

私の肩をポンと叩くと、高嶺先生はサロンを出て行った。


「何を話してたの?」

蘭々さんが、私の席に来てくれた。

蘭々さんは他のお客様と話していて、忙しそうだった。

「絵の話ですよ。これ、とても美味しいです。」

「食材からこだわって、お出ししてるのよ。」

サロンでは、腕の良い料理人が雇われていた。




美しい男の人、伊吹さんは。

顔は勿論、体も……。

無駄がなく、削ぎ落とされてる。

学生時代に水泳をしていて、今も定期的にジムのプールで泳いでいた。

私の五歳年上で、嫌味なくらい、完璧過ぎる。

料理、掃除、洗濯が、私より得意で、良くやってくれた。


私が絵の仕事をしてるのも、応援してくれて。

良い夫だと思う。


「…んっ。伊吹さん、あッ。」

夫婦の寝室に、私の甘い声が響いた。

充葉は子供部屋で寝てる。

ベビーシッターの菖蒲さんは、毎日、通ってくれていた。


「また、イッちゃ、…あァッ!」

伊吹さんは腰の動きを早め、私が先に絶頂に達して、伊吹さんも後を追うように達した。



“見合いをしろ。”

父から呼び出しを喰らい、実家に顔を出した。

“なかなかの美男子よ!鳳不動産の御曹司で、日本の大学を卒業した後、アメリカに留学して経営学修士課程の学位を取得されて、今年、帰国されて働き始めたそうなのよ。”

お見合い写真を開いて、見せてくる母……。


私の前に美妃さんが、お茶を置いてくれた。

お礼を言い、一口飲んだ。


私には、拒否権がないので、お見合いはするしかなかった。

相手の出方次第で、今後の動きを決めるつもりだった。


私は運が良かった。

お見合い相手が、……伊吹さんで。




「充葉、行ってくるね。」

もうすぐ三歳になる、充葉の頭を撫でた。

「行ってらっしゃいませ、奥様。」

充葉は菖蒲さんに抱っこされていて、ご機嫌である。

菖蒲さんに良く懐いていた。

菖蒲さんは三十代で、幼稚園勤務の経験があり、子供の扱いに慣れていて、ベビーシッターの資格を持ち、安心して任せられる。


「行って来ます。宜しくお願いします。」

菖蒲さんに充葉のお世話を任せて、マンションを出た。

伊吹さんはもう出勤していて、私は絵を仕上げに、アトリエに向かった。

祖父の知り合いの奥様から、ご依頼を受けた肖像画の最終仕上げだ。

一日、アトリエに籠って、作業する。


充葉と元貴は、二歳差の兄弟。

元貴は白山家、兄と美妃さんの元で、元気に育っていた。


私は今年、二十五歳の年で伊吹さんは三十歳になる。




一日の作業を終えて、私は帰宅した。

菖蒲さんは充葉を寝かし付けて、自分の家に帰って行った。

ご飯を食べて、お風呂に入り寝る準備をした。

伊吹さんも帰って来て、ご飯を食べてお風呂に入った。


……伊吹さんから、お風呂上がりの良い香りがする。

キスをしながら、ベッドに押し倒された。

ワンピースのパジャマを着ていて、前開きのボタンを外されて、脱がされた。

胸を愛撫される……。

乳房を揉まれて、乳首を摘まれて。

「あっ。」

硬く勃起する乳首を口に、含まれて甘噛みされた。

私の乳首の色は濃くなって、乳首が大きくなった。

妊娠、出産を経て、母親になったから。


伊吹さんは私の秘部に顔を埋めた。

子供を二人産んだ、膣内に舌を入れて、中を解して……。

……処女の時より、出産前より緩くなってるのでは。

私の処女を捧げた相手、……伊吹さんは。


私の今の体に、満足してくれてるのかな。

子供を二人産んだので、避妊するようになった。


コンドームを付けて、伊吹さんは私の中に入って来た。


週に一度程度、セックスをしていた。

伊吹さんは五歳年上だけど、若々しくて体が引き締まっていて、体力もある。

仕事が出来る人って、体力お化けな人が多いと思う。

仕事する前、後にジムに行って泳いだり、してた。


父もそう。

ランニングが趣味で、良く走ってた。

学生時代、マラソンの選手で大会で優勝した経験が、あるらしい。

兄も弟も運動神経抜群。

私は運動嫌い。運動神経悪くはないけど、汗かくのと疲れるのが嫌だ。

絵を描いてたい。


セックスは好き。

気持ち良い、から。




完成した肖像画を届けに、ご自宅に伺った。

立派なお屋敷で、貴族の館みたいだ。

著名な建築家の方が、設計したそう。


「出来栄えは、如何でしょうか?」

今回、ご依頼頂いたのは電機会社を興した、創業者一族の大奥様で、祖父とは長年、親交があり何度かお会いした事があった。


「とても、気に入ったわ。昔から貴女の絵、一枚は欲しいと思っていたの。肖像画を描いて頂けて、念願が叶ったわ。」

「……ありがとうございます。」

大奥様はグレイの豊かな髪に、切れ長な目元が涼しげな、お美しいお方であった。


大奥様がくれた封筒には、三十万円が入っていた。 

感謝の気持ちだと、色を付けてくれた。

二倍の報酬で、有難く頂戴した。


私は処女だったが、男の人のヌードには、抵抗がなかった。

兄と弟がいるのと、プロのモデルの男の人で見慣れていた。

男性器の色や形、大きさは人それぞれで、個性があった。


伊吹さんの男性器は、大きくて太い。

立派な男の象徴で、形も色も、美しかった。



避妊しない種付けのセックスから、夫婦のコミュニケーションで、楽しむセックスに変わった。

情事の最中の伊吹さんは、美しく色気があり、情熱的で刺激的で、とても興奮した。


腹の中に子種、精液を注がれるのは、ゾクゾクした。

伊吹さんの精子が私の卵子と出会い、子供が出来る……。

腹の中で十月十日育て、やっと産まれて来る。


妊娠、出産は、良い経験だった。


母親と言う、生き物にしてくれて、感謝していた。

子育ては菖蒲さんの手を借りて、母親としては未熟だが、日々の成長を楽しみにしてる。



蘭々さんのサロンには、ピアノがあり音大生の子をアルバイトとして、何人か雇っていた。

画壇関係者と文化人の他に、企業の社長や重役も、お客様の中にいるので、才能を認められたら、スポンサーになってくれる、かも知れない。

音大に通う子は、裕福な家庭で育った子ばかりではない。

美大でも比較的、お金持ちの家の子が多かったが、北斗先輩や志摩先輩、後輩の不破くん達は、奨学金を借りて通っていた。

優秀な学生には、学費が免除された。


蘭々さんにどうして、ヌードモデルをしてたのか、聞いたら、美しい姿を美しいうちに、残して置きたかったと、言っていた。

蘭々さんは十八歳から二十七歳まで、ヌードモデルをした。

どれだけ歳を重ねても、蘭々さんは美しいままだと思う。

現在はサロンのオーナー。

本音を言えば、手っ取り早くお金を稼ぎたかった、とも……。

ご両親を事故で亡くして、蘭々さんは頼れる親戚もおらず、児童養護施設で育ったそう。


高嶺先生と蘭々さんが、愛人関係だと噂があったので、本人にストレートに聞いた。

愛人関係なんですか?、と。

笑いながら、否定された。

親切にして下さるだけ。ただの、画家とモデルの関係よ、と。

高嶺先生には、妻子がいる。

奥様は資産家のご出身で、子供は息子が一人か二人、いると、雑誌の取材の記事で読んだような、記憶があった。


婚約者の頃から、伊吹さんは私を由貴子さんと呼んで、敬語も崩さない。

好きに呼んで話してくれて、構わないから、別に良いのだが、私の方が五歳年下なので、普通の夫婦ではなかった。

私は由貴子と、呼び捨てにされるのが、あまり好きではない。

おい、とか、お前、と呼ばれる方がまだ良い。


家族や幼馴染は、私を由貴か、由貴ちゃんと呼ぶ。

蘭々さんは、由貴子ちゃんと呼んでくれた。




旧姓の白山で仕事をしてる。

画壇の中で私は、ほぼ無名のしがない絵描きだ。

名門美大を中退、コンクール受賞歴はなし。

祖父の人脈のおかげで、肖像画、本の挿絵や広告の仕事をもらっていた。

コネは実力のうちなので、存分に利用した。


私は宗教画を描かないし、女の人をモデルにしか描かない。デッサンは男の人も勉強の為にするが。

モチーフによって、差別されるのは昔の話ではあるが、女より男が活躍してるのは、今も昔も変わらなかった。

なので、画壇は嫌い。

頭の硬い、爺ばっかり。

才能も、教養も、優れてる人もいるが、そうではなく、男だから、優遇されてる人もいるのが、気に食わなかった。

それもあり、コンクールに自分の作品を出した事は、一度もなかった。

画壇からの評価なんて、もらっても嬉しくなかった。


男社会なのは、どこもそうだろうが。

女性の社会進出が、どれだけ進もうが、その社会構図が変わる事は、一生ないと、確信していた。


女は男に服従する、そう求められる。

男の所有物だと。



「んぅ、あッ。」

四つん這いになる私は甘く喘いだ。

「…あァッ、んっ!」

服従して伊吹さんの所有物にされる、……それは悪くなかった。

獣のように本能のままに、求めて……。

背後から両手で腰を掴まれて、奥まで激しく突かれ、ベッドが動きに合わせて軋んだ。

肌がパンパンと音を立て打つかり合い、愛液がグチュグチュと、卑猥な水音を立て、夫婦の寝室に響く。


「ハハッ、」

笑い声が漏れた。

「どうしました?」

急に笑い出した私に、伊吹さんは聞いた。

「このままだと気持ち良過ぎて、頭が馬鹿になりそうです。」

「男冥利に尽きますね。」

本当に、おかしくなる。


伊吹さんとしか、経験がないから確かとは言えないが、伊吹さんには、セックスの才能があると思う。

上手くてテクニシャンだ。