今日は男女のペアヌードで、モデルさんが二人呼ばれた。
男の人は三十代くらいのワイルド系のモデルさんで、女の人は蘭々さんだった。
絡み合う男女をデッサンしていく。
休憩を挟んで、ポーズを何度か変えた。
抱き合ったり、セックスしてるみたいな、刺激の強いポーズを繰り返した。
プロのモデルさんなので、勃起する事はなかった。
男子部員は、辛そうだったけど。
股間を膨らませて。
……伊吹さんの男性器は、大きくて太かった。
立派な男の象徴だった。
月に一度、伊吹さんの部屋に行く。
伊吹さんは手料理を振る舞ってくれて、とても美味しかった。
部屋は掃除が行き届いていて、ワントーンに纏められた、落ち着いた大人の部屋だった。
家具は高級な一級品、キッチン雑貨やお皿の食器類はお洒落である。
シャワーを浴びに、洗面所に行っても、女の影はなかった。
……いるとしても、隠すよね。
色違いの歯ブラシが立ててあったら、どうしようかと思った。
私は浴室でシャワーを浴びて、用意されていたバスローブを羽織った。
シャワーを浴び終えた、伊吹さんの顔が近付いて、キスをされた……。
私の口の中から舌が出ていって、唇が離れると、唾液が糸を引き切れた。
バスローブの腰紐を解かれて、脱がされた。
私の何も身に付けてない肌が、伊吹さんの前に晒された。
ゆっくりと、ベッドに押し倒された。
「…んっ。」
伊吹さんの大きな手で、胸を愛撫される。
「声、我慢しないで。」
「……はい。…あッ、んぅ。」
乳首を摘まれて、指先で擦られて……。
勃起する乳首を舌で、ねっとりと舐め上げられた。
伊吹さんのそんな姿は、とても煽情的。
興奮を煽られた。
伊吹さんとお見合いしてから、約半年が過ぎた。
私は大学三年生になり、二十一歳になる年だ。
お見合いしたのは、私が二十歳の誕生日を迎えたばかりの頃だった。
兄は私の四つ上で、弟は三つ下だ。
兄の奥さんは兄と同い年で、子宝にはまだ恵まれてなかった。
義理の母である姑と、同居してるから大変だろうな……。
兄は仕事で忙しく、帰宅するのは夜遅い時間。
……疲れてるから、そう言う気が起きないのかなと、兄夫婦の性生活を心配していた。
蘭々さんは私の二歳年上である。
北斗先輩や、志摩先輩は一学年上で、四年生になった。
ヌードモデルの仕事を終えて、帰るところの背中を追い掛けた。
「あの!すみませんっ!」
私が声を掛けると、振り返った。
その時の蘭々さんの格好は、薄ピンクのブラウスに白のスカート。
ブラジャーとショーツは、上下でお揃いのベージュを付けていた。
「私、油絵学科の二年、白山由貴子って、言います。絵のモデルの仕事をお願いしたくて……。」
「……わたし、高いわよ?」
あなたに払える?と、聞かれた。
「お金ならあります!」
ご心配なく、と。
連絡先を交換して、ヌードモデルになってもらった。
私の芸術の女神、ミューズに……。
大学二年生になった、ばかりの頃だった。
何度も伊吹さんに抱かれて、私も伊吹さんを求めた。
私は伊吹さんの子供を妊娠した。
伊吹さんは避妊をしなかった。
家族に妊娠した事を伝えると、喜ばれた。
白山家と鳳家の血を継ぐ子供だから……。
両家に強い繋がりが出来た。
絵を描くのはお休みして、暫く子育てに専念する。
休学届を提出した。
桔梗荘から、伊吹さんのマンションに引っ越した。
伊吹さんは料理、掃除、洗濯、なんでも出来た。
私はどれも苦手。
絵しか、描きたくなかった。
子供が生まれる前に入籍して、伊吹さんと私は夫婦になった。
婚約者から夫に。
私は鳳家の跡取りになる、男の子を出産した。
名前は伊吹さんが考えてくれた。
充葉、と。鳳充葉……。
素敵な名前だった。
伊吹さんにも、兄夫婦がいるが子宝に恵まれなかった。
嫡男のお義兄さんは跡取りが出来ず、肩身の狭い思いをしていた。
会社内でも、弟である伊吹さんを次期社長に推す声が……。
伊吹さんは完璧で、優秀過ぎた。
鳳家の跡取りまで、作ってみせた。
全ての期待に応えられる、器を持ち合わせていた。
“もう一人、子供を産んでくれ。”
出産を終えたばかりの病室で、父から言われた。
白山家の跡取りを私に産め、と。
父には兄の他にもう一人、息子がいる。
が、私の弟は自由人で、結婚する気なんて、なさそうだった。
弟が跡取り問題を抱えるのは、可哀想だ。
好きな事をして欲しい。
私は体だけは丈夫なので、了承した。
伊吹さんに、もう一人子供が欲しいと話すと賛同してくれた。
兄と兄の奥さんには、頭を下げられた。
休学していたが、退学する事にした。
元々、名門美大を卒業したと言う、学歴が欲しくて通っていた。
“結婚後も好きな事をして構いません。家に閉じ籠ったりせず、自由に過ごして頂いて結構です。”
と、初めて会ったお見合いの席で、そう言ってくれた。
なので、美大に未練はなかった。
私は二人目を妊娠した。
充葉のお世話は、伊吹さんが雇ってくれたベビーシッターさんが見ていてくれて、助かった。
祖父の知り合いから、本の挿絵や広告の仕事が舞い込んで来た。
本は妖精が登場する、ファンタジー作品で、広告は化粧品のキャンペーンだった。
祖父は私が好む、仕事を持って来てくれた。
祖父にはお世話になりっぱなし。
絵を描きながら、妊娠期間を終えた。
二人目も男の子……。
白山家の跡取りになる子だ。
名前は私が考えた。
元気に育って欲しいのと、私の由貴子から漢字一文字を取って、元貴にした。
鳳元貴、に。
私は無名の絵描きだが、本の挿絵や化粧品のキャンペーン広告が、業界内で評判になり、自然と仕事が来るようになった。
本当、祖父に感謝である。
高校生の時、後輩の女の子に絵を描かせて欲しいと、お願いした事があった。
その子はバレエをやっていた。
国際的なコンクールに出場して、入賞する程、バレエに打ち込み、才能もある子だった。
華奢でありながら、筋肉が付いていて……。
小さな顔に長い手脚、妖精のような女の子。
美しかった。
けど、大きな怪我をして、バレエが出来なくった。
その女の子は、自殺してしまった。
バレエが出来ないなら、生きていても死んでるのと同じだと。
私はバレエ教室に行って、レッスンを見学させてもらって、その女の子を描いて、家で色を塗り仕上げた。
私の描いた絵は、その女の子の家にある。
額縁に入れてプレゼントすると、その子はとても喜んでくれた。
私は気持ちが分かった。
……痛い程に。
絵が描けなくなったら、私も同じ事をすると思った。
幼馴染の奏矢は、ピアノとチェロの両方を習っていた。
高校の音楽科に入学する時、チェロを専攻すると決めた。
父親がプロのチェリストで、奏矢は国際的なコンクールに出場して、いくつも賞を取っていた。
奏矢が血の滲むような、努力をしてるのを知ってた。
私は美大で、奏矢は音大に進学した。
“俺の一番のファンでいて。”
大学一年生の時、キスされそう言われた。
奏矢は私を好きだと言ってくれた。
けど、彼氏彼女になりたいわけではないと。
“由貴ちゃんは、俺の初恋で大切な人だよ。”
奏矢は私を由貴子ではく、由貴ちゃんと呼んだ。
私にとっては奏矢は、幼馴染で大切な存在だった。



