二度目のデートは、鉄板焼き屋さん。
私がお肉を食べたいと言ったら、連れてってくれた。
目の前でシェフが焼いてくれて、頬っぺたが落ちそうな程、美味しくて感激した。
店内の雰囲気も良くて、デートにぴったりだった。
ガーリックチャーハンを食べたからなのか、この日もキスをしなかった。
伊吹さんは結婚するまで、私に手を出してこないのかな……。
キスくらいは、してくれて構わないのに。
……私以外に、心に決めた相手がいるのか?
政略的な結婚だから、仕方ないとは思うが、デートしてくれたから、多少は好意を持たれてる、と思ってた。
私は処女である。が、キスは経験があった。
幼馴染の奏矢とした事が。
奏矢は音大に通い、チェロを専攻している。
父親がプロのチェリストで、母親は自宅でピアノ教室をしていて先生。
絵ばっかり描いてたから、私は行ってないけど、兄と弟が生徒だった。
“あの美女、高嶺先生の愛人ってマジ?”
北斗先輩から、聞かれた。
蘭々さんが高嶺先生の愛人かどうかは、知らない。
高嶺先生は私達が通う美大の卒業生で、現在は客員教授を務めてる。
大胆な筆使いで、面白い構図を描く。
高嶺先生の作品はあまり、好きではない。
絵からナルシスティックで、独善的な性格が窺えた。
絵は上手い下手ではなく、好みの問題なので、人それぞれだ。
仮に画壇の重鎮で、大きな影響力を持つ人物で、そんな高嶺先生の絵にケチを付けようものなら、私の絵は一生、評価される機会はなくなるだろう。
デッサンは基本二十分で、五分休憩を挟んで繰り返す。
私語は厳禁だけど、私のアトリエで二人きりの時は、話しながら描いた。
その方がリラックスして、自然な感じが描ける気がするのと、密室で黙ってるのが苦手だ。
つい、話したくなる。
学校では我慢する。
蘭々さんはプロなので、私に合わせてくれた。
“触ってみる……?”
蘭々さんからそう聞かれた時、私は首を横に振った。
同性とは言え、モデルに触るのはNGだ。
私はモデルをしてくれるお礼に、二万円を毎回渡していた。
モデル代は日当一万円で、後は条件次第って、感じが相場だった。
ヌードありは、日当二万円が基本で。
“由貴子ちゃんは特別。……触って。”
恐る恐る、私は蘭々さんの体に触れた。
蘭々さんの肌は滑らかで、気持ちが良かった。
女の肌には魔力があるって、なんかの本で読んだ記憶があったが、その通りだと思った。
三度目のデートには、私が行きたいと言った、展覧会が開催されてる美術館に。
美しい作品を見て、創作意欲が刺激された。
帰りは桔梗荘まで車で送ってくれて、今日はありがとうございました、とても楽しかったですと、お礼を言った後、私は助手席から身を乗り出し、運転席の伊吹さんの頬にキスをした。
私が車から降りると、伊吹さんは車を走らせ、帰って行った。
そこで丁度、桔梗荘から出て来た、北斗先輩と鉢合わせた。
「キス、してたな。破廉恥だ。」
「頬っぺたです。」
「彼氏?」
「婚約者です。」
「……金持ち、スゲェな。相手の男、メチャクチャ高級車に乗ってたじゃねぇか。」
「お金持ちですからね。」
「三度目の正直になった?」
ブラジャーのホックを外す、蘭々さんから聞かれた。
「進展はなしですね。私から頬にキス、したくらいです。」
「……由貴子ちゃんから?したの……?」
「はい。しました。」
「わたしにも、して!」
「えッ?!」
上半身裸で迫って来た、蘭々さんに私は壁際に追いやられた。
壁ドン、である。
「あの、蘭々さん……、」
「キス、わたしにもして。」
キスしないと、デッサンさせてもらえなさそう。
私は蘭々さんの手を取って、手の甲に唇を押し当て、優しくキスをした。
騎士がお姫様に忠誠のキスをするみたいに。
「これで満足、して頂けますか?」
「……うん。」
四度目のデート、私は伊吹さんの部屋に行きたいと言った。
「もっと、お互いを知る為に、しませんか……?」
伊吹さんは私の誘い水に乗った。
高級マンションに、伊吹さんは一人暮らしだった。
寝室のベッドに腰掛けると、優しくキスをされた。
「…んっ。」
伊吹さんのキスは、気持ち良かった。
唇を啄まれて、唇を甘噛みされて……。
唇の隙間から、舌が入って来た。
私の内頬や上顎を擦り、粘膜を刺激して、舌を絡め取り、口の中を味わい尽くした。
何不自由なく、私は育った。
高校まで、私立の女子校をエスカレーターで上がった。
祖父から美術の英才教育を受けた。
コレクションを見せてくれただけでなく、休みの日には、美術館に連れてってくれた。
絵画教室に通わせてくれて、好きなだけ自由に絵を描いた。
兄と弟は、絵に興味がなかった。
大学一年生の時、奏矢からキスをされた。
嫌ではなかった。
女子校育ちで、家族以外だと、一番近い距離にいた。
奏矢の事は好きだけど、それが恋で恋愛感情なのかは、分からなかった。
幼馴染で大切な存在なのは、間違いなかった。
母に赤ちゃんって、どうやって作るの?と、聞いた事があった。
純粋な疑問だった。
キスは知ってるけど、セックスが具体的にどんな事をするのか、当時は知らなかった。
母は未来の旦那様に全部、教えてもらいなさいと言った。
私は伊吹さんに、教えてもらう。
ベルトを外す音が、やけに耳に響いた。
ブラジャーもショーツも脱がされて、裸にされた。
伊吹さんは私の体に触れて、体中にキスを落とした。
舐められもした。
脇とか、足も。
秘部に指を入れられて……。
私は初めて、イクって感覚が分かった。
「……由貴子さん。」
名前を呼ばれて、優しく頬を撫でられた。
私の中に伊吹さんが入って来た。
「すみません。痛いですよね。」
「大丈夫です……。」
繋がって、もう処女膜は破れたのだろうか。
「……動いて良いですよ。」
私は伊吹さんの首に腕を回した。
伊吹さんは動き始めた。
「…あっ、んぅ。」
自然と甘い声が漏れて、またイッてしまった。
「そんなに、締め付けないで下さい。」
「……すみません、」
力の抜き方が分からなくて、ぎゅうぎゅうと締め付けてるのが自分でも分かった。
情事の最中の伊吹さんは、一段と美しく色気があった。
後輩の不破くんが下着姿で、体操座りしてポーズを取っていた。
デッサンサークルの男女比は半々だ。
不破くんは小柄で、細身な男の子……。
……伊吹さん、着痩せするタイプなのか、脱いだら、美しい筋肉が付いていた。
学生時代、水泳の選手だった、と。
今でも、定期的に泳ぎに行ってると、言ってた。
背が高くて、洗練されていて、モデルさんみたい。
初対面のお見合いの席は、仕立ての良いスーツだった。
デートは私服で、お洒落で格好良かった。
服装のセンスまで良かった。
優しく、抱いてくれた。
美しかった。
伊吹さんをモデルに、絵を描きたいくらいだった。
「……由貴子ちゃんっ、」
蘭々さんは私の目の前で、脚を大きく開いて、自慰をしてる。
見ていてと、言われた。
膣内に指を入れて、自分で良いところを擦り……。
官能的で艶かしい。
美しくて、目が離せない。
指が出たり入ったりして、卑猥な水音が響く。
愛液が滴り、指が濡れていた。
「……気持ち良いですか?」
「気持ち、良いッ!」
「私の目を見ながら、イッて下さい。」
「…うんっ。あァッ、ん!イクっ…!」
蘭々さんは私の目を見つめたまま、絶頂に達した。
蘭々さんの女性器を細部まで描いた。
後日、完成した作品を見せると、
「由貴子ちゃんが描くわたしが、……一等美しわ。」
と、お褒めの言葉を頂いた。
描いた作品は、額縁に入れて蘭々さんにお渡しした。
私のサインも入れた。
Yukico.S.
蘭々さんは私に、お礼だと十万円くれた。
祖父の知り合いの奥様方からは、十五万円で肖像画のご依頼を頂いていた。
私はコンクールに作品を一度も、出した事がない。
絵画教室の先生や、私の絵を見てくれてる美大の先生には、何度かコンクールに出してみたら、どうかと言われた事はある。
賞には興味がなかった。
名声が、欲しいわけじゃない。
画壇からの評価、世間からの評価は、私には必要なかった。
私に絵を描いて欲しいと、依頼してくれる人には、喜んで欲しいので、全力で向き合った。
祖父の人脈のおかげで、依頼は絶えなかった。
私が通う美大は名門なので、ネームバリューのおかげもあった。



