女の子らしく、恋に憧れていた。
恋に恋してた。
結婚が自由に出来ないからそこ、強く心惹かれるものだった。
兄と美妃さんが仲睦まじくて、お互いに思い合ってるのが分かった。
兄と美妃さんは高校の同級生で、野球部の選手とマネージャーの関係で、兄から告白して気持ちを伝えたと……。
美妃さんも同じ気持ちで、真剣な交際がスタートした。
兄に根掘り葉掘り、馴れ初めを聞いたから知ってた。
私はお見合い結婚した、伊吹さんに恋をした。
伊吹さんとは離婚した。
好きで、愛してた。
最愛の人……。
今でも、愛してる。
その気持ちは変わらなかった。
私の二人目の子供、兄夫婦に養子に出した元貴は、小学校二年生になった。
私は実家の白山家から、勘当されてるので会えていない。
小学校に入学した時に、お祝いに万年筆を送った。
父と母が配達員の方から、受け取ってたら、処分されてると思う。
兄か美妃さんが、受け取ってくれてると良いんだけど……。
万年筆の行方は分からずじまいだった。
長男で鳳家の跡取り、充葉が小学校に入学した時も郵送で送った。
宛先は離婚するまで、住んでいた伊吹さんのマンションにして。
三人目の子供で私生児、幼馴染の蒼矢との間に生まれた、有栖子は幼稚園の年長なので、来年小学校に入学する時に、買って贈るつもりだ。
四人目の子供、由乃は幼稚園の年少になった。
私は画家として、精力的に活動していた。
女性を描かせたら、日本でトップクラスの画家、と評価されてるけど、満足は出来ない。
莉亜ちゃんが言ってくれた、才能を持っていて、将来は有名な画家の先生になる……。
莉亜ちゃんの目は正しかったと、証明する為に、努力し続ける。
慢心はない。
私にとって、絵を描く事は呼吸するのと同義。
絵が描けなければ、生きてる意味がなかった。
三十歳で初めて、個展を開催した。
歴史のあるコンクールで大賞を受賞、画壇関係者からの評価、美術評論家からの評価、世間からの評価を獲得した。
画家の白山由貴子として、注目を浴び、個展を開けるまでの才能を認めさせた。
来場するお客様に絵の解説をしたり、サインを求められたり、画家の先生らしい事をした。
私が学生の頃から、絵を見てくれて好きだと、ファンになってくれた方とも、ゆっくりお話が出来て、楽しかった。
作品は全てに買い手が付いた。
幼稚園児の頃から、絵画教室に通い、絵画教室が主催する展覧会や、美大時代には学生展覧会に絵を出していた。
現在は、画廊に作品を置かせてもらってる。
個展のテーマは、愛と美……。
私が愛する美しい人達を描いた。
会場は人気のギャラリーで一年以上前から、会場を押さえた。
会場使用料は馬鹿みたいに高いし、作品を制作し終えたら、輸送料と搬入料も掛かるし。
私は大きい作品と中くらい、小さい作品と、バランス良く作った。
制作中は、めちゃくちゃ楽しかった。
凄くワクワクした。
……兎に角、準備が大変だった。
色んな打ち合わせをして、……心が折れそうになった。
作品リスト、ホームページ、ポスター、etc。
値段設定は画廊で担当してくれてる、薬師寺さんに相談して決めた。
薬師寺さんが会場のギャラリーとか、ポスターを発注するのに、おすすめの印刷会社を教えてくれたり、アドバイスをしてくれて。
本当に助かった。頼りになる。神。
個展のお祝いに沢山のお花や、お菓子を頂いたのも嬉しかった。
ぶっちゃけ、もうやりたくない。
楽しったし嬉しかったが、暫く抜け殻のようになった。
心とエネルギーを使い果たした。
個展を開くのは、一つの目標だったから、それを達成したのは、喜ばしかった。
伊吹さんの鳳不動産、社長就任パーティーの招待状が来て出席して、充葉と久しぶりに会った。
充葉が幼稚園の年中の頃に離婚したから、約五年ぶりの親子の再会だった。
忘れられてるかなと、思ったけど、充葉は覚えてくれてた。
立食式のパーティーで、充葉と食べたい物を選んで、一緒に食べた。
充葉は私と同じく、お肉が好きみたい。
嫌いな食べ物はなくて、偉いと思った。
私はパクチーとか、癖のあるスパイスが無理。
伊吹さんは好き嫌いがなく、なんでも食べた。
充葉とは、手紙のやり取りをするようになった。
私からの万年筆を使って、書いてくれた。
字がとても美しく、便箋や封筒にこだわっていて、センスが素晴らしい。
私が小学生の頃とは、大違いだった。
大人びてる。子供らしさ、は欠けていた。
私より、伊吹さんに似たんだろう。
充葉は顔も、鳳家の血筋を感じさせる、美しい顔立ちをしてる。
充葉の祖父に当たる、先代社長の汐里さん、父親の伊吹さんと、同じ系統の顔立ちだ。
スイミングスクールと英会話教室に、通ってるみたい。
学校であった事とか、手紙に書いてくれた。
私は一軒家に五人で住んでいる。
年齢順にいくと、元ヌードモデルで現在は社交サロン『Lulu』のオーナーを務める蘭々さん、画家として仕事をする私、幼馴染でプロのチェリストの奏矢、奏矢との間に生まれた娘の有栖子、父親が伊吹さんか奏矢か分からない娘の由乃……。
白山家に養子に出した元貴は、私ってより、元貴の祖父に当たる、私の父に似ていた。
兄とか、弟の遼河の子供の頃にそっくり。
私の顔は、天堂林業の創業者一族のお嬢様だった、母親似で、母方である天堂家の系統って、感じだ。
童顔で実年齢より、若く見られがち。
有栖子は父親の奏矢に良く似ていた。
奏矢の父親がイギリス人で、有栖子はクォーターなので、色素が全体的に薄く、……天使である。
末っ子の由乃は、母親の私に似ていた。
有栖子は今、新体操に夢中だ。
幼稚園で仲の良いお友達が習っていて、自分から有栖子も行きたいと、新体操教室に通い始めた。
柔軟運動、マット運動から、リボン、ボール、フープ、クラブなど、手具を使った演技指導まで、受けていた。
発表会を見に行って、娘の努力と成長を感じられた。
習い事は本人のやりたい事をやらせるのが一番。
無理矢理やらせたところで、身に付かない。
年少の由乃まだ、習い事をしてない。
なんでも良いから、自分の好きなもの、興味のあるものを大切にして欲しい、と思った。
有栖子と由乃は、フルーツやヨーグルトを好んで食べた。
朝ご飯の定番メニューで、有栖子はマスカット、由乃はパイナップルが特に好き。
ヨーグルトは好きな味があって、メーカーにこだわりがあった。
好きなメーカーのヨーグルトしか、食べなかった。
こだわりがあるのは、良い事だ。
有栖子と由乃は、中身が私にそっくり。
奏矢は仕事の音楽面でだけ、こだわりが強かった。
食の好みとかは、そんなになかった。
男性器にはそれぞれ個性がある。
伊吹さんは大きくて太くて硬い……。
奏矢はイギリスの血が入ってるハーフだから、純日本人とは少し違った。
色素が薄く硬さも違う。
伊吹さんも奏矢も、立派な男の象徴を持ってるのは、同じだった。
容姿が整ってる人は、男性器まで美しいのだ。
……色も形も、神秘的。
美しくないところがなかった。
蘭々さんもそう。
女性器まで、美しかった。
体の中の内側まで美しい。
伊吹さんと奏矢は、私を夢中にさせた。
女の体を悦ばせるのが上手くて、テクニシャンであった。
由乃の父親が分からないのは、同じ日に違うタイミングで抱かれたから……。
社長就任パーティーに出席して、終わるとパーティーの会場だった、ホテルの上の階の部屋に誘われて、私は着いて行った。
部屋はスイートルームで、広くてゴージャスだった。
伊吹さんに抱かれて、一軒家の家に帰宅すると、奏矢から聞かれた。
元旦那さんと会ったのかと、……私は会ったと答えた。
奏矢に手を引かれて、奏矢が個人で使ってる部屋で抱かれた。
何故、伊吹さんに会ったのかと、分かったのかと不思議で、いつもと何か、雰囲気が違ったのかと思ったが、後から、お風呂場で首筋を見て分かった。
伊吹さんにキスマークを付けられていた。
肌を吸い上げられ赤くなり、私の白い肌にくっきりと跡があった。
伊吹さんとは婚約者の頃みたいに、一ヶ月に一度、会うようになった。
会うのはホテルの部屋。
元夫婦だが、密会、と言うのかな。
伊吹さんは個展に来てくれて、莉亜ちゃんのお母さんとお兄さんも来てくれた。
わざわざ足を運んでくれて、お祝いに花束とお菓子まで頂いて、とても嬉しかった。
私は四人の子供を出産したが、至って健康で元気でピンピンしてる。
つわりも軽かった。
出産は命懸けと、言う……。
けど、私の場合は四人とも安産で陣痛から、そんなに時間が掛からず、スルッと生まれて来た。
母親思いで、良い子達だ。
ありがたい。
昔から、丈夫な体だった。
取り柄、と言って良い。
父に平手打ちのビンタをされても、グーの拳で殴られても、ダメージはそんなになかった。
口の中を自分の歯で切ったり、頬が腫れたりしたが、怪我はすぐに治った。
心の方は、痛くてダメージを受けた。
そっちの方が、深刻ではあった。
目に見えないから。
……心の傷は。
「あッ、んぅ。イクっ、イッちゃう…!」
頭が馬鹿になる。
何も考えられない。
感じて、甘い声を上げ、乱れ狂う……。
「…伊吹さんっ、あァッ、んっ!」
絶頂に達して、膣内が収縮した。
締め付けて、精液を搾り取ろうとする。
ベッドのスプリングが軋み、肌が打つかり合い、愛液が混ざり合う。
卑猥な水音が耳を犯す。
「んッ、…あァっ。」
伊吹さんの腰は止まらず、また絶頂に達した。
気持ち良過ぎて、快楽から涙を流すと、伊吹さんに舐め取られた。
……涙なんて、美味しくないのにと、思った。
私が長年恋焦がれてる、彫刻家の終夜先生がイタリアから帰国して、日本で大規模な個展を開催……!
祖父と蘭々ちゃんと行く事になった。
祖父はグレイの髪を撫で付けて、英国紳士みたいに、スリーピースのスーツがお似合いで、白山銀行の先代頭取で、現在は美術館の館長である。
有栖子と由乃は幼稚園で、奏矢はコンサートツアーで、海外に行っていた。
九つの国と地域、十五都市を回るので、帰国はまだまだ先だった。
奏矢は世界的なチェリストの父親を超えて、母親の墓前で土下座させるのが目標だ。
私は奏矢の一番のファンで、頑張れと陰ながら応援してる。
「本物だぁ……。」
「良かったなぁ、由貴。やっとお会い出来て。」
「……ありがとう、おじいちゃん。今日は誘ってくれて……。」
「由貴子ちゃん、恋する乙女みたいね。」
蘭々さんにそう、言われた。
私の目はまさしく、恋する乙女に。
終夜先生と初めてお会いした。
終夜先生は父と同年代で、作品だけでなく、終夜先生自身も素敵……。
サインをお願いして、描いて頂けた。
同じ空気を吸えた。
もう、心がいっぱいになった。
絵を描きたくなって、祖父と蘭々さんとは早々に分かれて、私はアトリエに向かった。
創作意欲が湧きまくって、終夜先生から良い影響を受けた。
私の創作の源は、祖父のコレクションから始まった。
祖父は趣味で長年、絵画、彫刻、クリスタルなど、アート収集をして来た、コレクターである。
著名な先生の作品は勿論だが、無名な作家の作品でも、気に入ったら手に入れて来た。
祖父の審美眼は優れていて、手に入れた時は無名な作家でも、のちに芸術家として、大成した作家は多い。
美術品はステータス、資産としても扱われ、お金持ちが作品を求め群がった。
市場価値が上がり、価格が高騰して、価値は跳ね上がる。
私は英才教育を受け、目を養って来た。
絵を描く上で影響を受けた人は、五人いる。
幼馴染の奏矢、彫刻家の終夜先生、バレリーナだった莉亜ちゃん、元ヌードモデルの蘭々さん、元夫でお見合い結婚した伊吹さん……。
私の人生において、切っても切り離せない人達だ。
良い意味でも、悪い意味でも。
……一生付き纏う。
それぐらい、私の中で大きな存在だった。
「久しぶり、莉亜ちゃん。」
線香に火を付け、煙が上がった。
「今日は“由貴子先輩”と伊吹が来てくれたぞ。」
莉亜ちゃんに合う、百合の花を飾った。
花粉はお花屋さんで、落としてもらった。
莉亜ちゃんのお墓参りに、伊吹さんと伊吹さんの親友で、莉亜ちゃんの兄である、櫂さんの三人でやって来た。
櫂さんと伊吹さんは、中高一貫の男子校の同級生で、中学からの親友だそう。
……莉亜ちゃんが、不思議な縁を結んでくれた、のかな。
伊吹さんは莉亜ちゃんの葬儀で、私を見掛けて、“白山由貴子”だと、そこで認識したと……。
白山銀行を興した、創業者一族の人間だって。
親友の妹と親しかった先輩と、お見合いして結婚する事になるとは、伊吹さんとしても、予想してなかったのでは。
本当に不思議だ。
出会ったのは運命、だったら嬉しい。
恋をしたのは、必然か。
どんな出会い方だったとしても、伊吹さんには恋をした気がする。
とても美しく、魅力的な人だから。
私は今も、伊吹さんに恋をしている。



