恋愛初心者③〜学園祭は驚きがいっぱい!〜


「昨日の話し合いで取ったみんなからの意見メモってある?」
「うん、持ってきたよ」


 ソファーとかイスは一脚買うだけでもかなりのお金が必要だけど、フォトスポットを作るときに使ったソファーだったり、カフェで使ったイスはたくさん倉庫に眠ってるそうだ。

 A組が過去に買ったものだから自由に使っていいみたいだし、備品で納得できるなら他の部分にお金をかけられるからいいよね。


 なぐり書きから清書したルーズリーフを机に置く。

 項目は衣装、内装、メニューの三種類で書き直したからちょっと大変だったけど……。おかげで見やすくなった。


「衣装のオーダーメイドはさすがに十万じゃキツそうだね。そもそもが高級品だし、悠人と椋の分合わせると五着。時間も厳しいと思う」

 あ、斎藤くんが着るのはもう決定なんだね……。


 桐谷くんはノリノリだったけど、斎藤くんがイヤなら止めた方がいいんじゃ……。

「あ、あの、斎藤くんは着るって言ってたの?」
「ん? 悠人に女装は男にしかできない行為だから恥じる必要はないって言われて納得してたよ」
 え!? それだけで!?

「悠人の女装は本物の女の子にしか見えないから、名前が割れたとしても男の自分に結びつかないはずってのもあるだろうけどね」
「桐谷くんって……日常的に女装してるの?」

「らしいよ。所作を美しく見せる訓練……だっけ。気を抜くとガサツなのが出るんじゃ売り出したいキャラと違うとかで。悠人にとっての女装は自分を高める手段の一つって感じじゃないかな。あそこまで乗り気なのはビックリしたけど」

 ス、ストイックだ……。女性ものって男性ものより高いし、女の子にしか見えないってことはすっぴんじゃないだろうから、基礎化粧品代だけでいくらになるのか……。


 最近、自分用に買い始めたわたしには高級さがわかる……。お家のお金使ってもいいって言ってもらってるけど、申し訳なくなるお値段だよ……。

 女性は化粧をって風潮があるならもうちょっとリーズナブルにしてほしいって何度思ったことか。


 安いやつ使ってお肌傷んじゃうのがイヤだから、いいやつ使ってるんだけど、化粧水とかリップだけだとしても消耗品だから中学生にはいいお値段になるんだよね。
 それを、自分を律するために続けられるなんて……!


「すごいね……」
「悠人のそういうとこ、俺も尊敬してるよ。常にファンから見る自分とか、どういう自分で売りたいかっていうのを考えてるから競争が激しい世界で成功してるんだろうね」

 うん。ちょっとでも応援できるようにって思って桐谷くんの出てる番組とかドラマは録画するようになったけど、努力してるエピソード聞いたらもっと応援したくなったよ。



 ……わたしも宗介くんみたいなカッコよくてスマートな人になるなら、男装して男心を学んだ方がいいかな?

「全部口に出てるよ。男は好きな子の前ではカッコつけたい生き物なんだから、空は空のままでいて」

 はっ……! 迷走するところだった……! そうだよね、可愛いを極める前に別のジャンルに手を出すなんてダメだよね。


「さ、話を戻そう。家具は来週の学級会までにどんなのがあるか確認するとして、もしちょうどいいのがあるなら衣装に力を入れるべきだと思う。大正ロマンってコンセプトだからね」

「うん、わたしも。和服って高いし、メニューはオリジナル性を出すなら自分たちで意見を出し合って開発するのも楽しいと思うからね」

「それなんだけど、空がポスター描いてる間に参考になりそうな喫茶店を見つけてさ。予約はいらないっぽいから明日視察に行ってみない?」
「……! 行きたい……! どんなとこ?」

「電車で大体一時間半、駅から歩いて十分ちょい。大正ロマンカフェは近場になかったけど、ここも結構それっぽいから」
 宗介くんが見せてくれたスマホの画面には、老舗喫茶店の紹介ページが。


「か、可愛い……」

 ピザトーストにナポリタン、そしてクリームソーダ!
 飲んでみたい……! 食べてみたい……!

 こういう雰囲気のある喫茶店って行ったことないけど、浮かないようにおしゃれしないと。



「ここ十一時オープンだから、十時すぎくらいには出発したいね。えーっとちょうどいい電車は……あ、今送った電車の十号車集合でどう?」
 ピロンと音がして、チャットにスクリーンショットが送られてきた。

 十時ちょうどにわたしの最寄り、青葉駅に到着する電車の一番後ろの車両だね。


「うん、大丈夫だよ」
「あ、あと明日どんな服着てくか帰ったら教えて。喫茶店だし、ファッションテイスト空に合わせたいから」
「わかった。すぐに送るね」
「ありがと」

 おしゃれするって決めたけど、こういうカフェってどんな服着てくのが正解なんだろう。本格的な着物とか持ってて着こなせるならカッコいいけど、わたしは浴衣しか持ってないし……。


 女学生さん風にジャンパースカートとか? 確か一着だけ持ってたような。帰ったらクローゼット確認しなきゃ。

 そのあとは二人で雑談をして、長居したからともう一品ジュースを注文。
 宗介くんが青葉駅まで送ってくれて、わたしはルンルンで帰宅した。



「ただいまー」
 さてさて、ジャンパースカートは……。

「おかえりなさい。もう遅いから早くお風呂入っちゃって」
 予定変更! 先にお風呂入ろ。