ちょっとしたトラブルはありつつも、いよいよ今日は学園祭前日。
ポスターは一番賑やかなものが採用されて、学校の最寄り駅や市の掲示板など、色々なところに貼られている。
飾る用に描いた絵は全部で二十二枚。メニューで七枚、ポストカード用に一枚、あとはリクエストで描かせてもらった。
水墨画風に、というリクエストとかもあって、それはすごく難しかったけど、黒の水彩で富士山を描いたら意外とそれっぽく……なってるといいな。
リクエストした本人が喜んでくれてるから成功って言っていいよね。
ポストカードはメニューの絵をそのまま使ったのと、ツバキの花の絵をシークレットで入れてみた。
お店になる特別室には簡単に剥がせる壁紙を貼って、月乃さん案のフォトスポットには写真用の食品サンプルが置かれている。
食品サンプルを作ったのは永野くん。なんと全部粘土らしい。
ソーダとか氷はレジンだけど、あとは粘土と着色に絵の具ちょっと使ったくらいらしい。
阿部さんがつけた「食品サンプラー」って二つ名に対して「刺繍よりはニガテ」って言ってたから、本物にしか見えないこれでもまだニガテな部類になるんだ。
特別室をお店仕様に準備して、日が傾くころに大体の装飾が終わった。
「準備が終わったところで、俺と空から渡したい物があるからあとちょっと時間いい?」
「うん! なになに?」
ロッカーから持ってきたミサンガを、一人ひとりに手渡していく。
ラッピングを開けたみんなが笑顔になってくれるのを見ると頑張ってよかったって思える。
自分たちにはないと思ってた羽場先生と高橋先生はビックリしながらも喜んでくれた。
「それじゃあみんなから連絡とかなければこれで解散に——」
「待って」
締めようとした宗介くんをさえぎったのは永野くん。
「俺からも渡したいのある」
そう言って持っていた紙袋からエプロンを取り出した。
「牧野からもらった看板がツバキモチーフだったから刺してみた。男子陣は胸元で、給仕陣が裾んとこ」
わあ……! 可愛い……!
「ありがとう!」
「気に入った。ありがとう」
「おそろいめっちゃいい!」
「よく全員分作れたよね。一ヶ月くらいじゃなかった?」
「まあ、宗介ならなんかサプライズ用意してるだろうなって思ったから。気合い」
フリフリだから普段使いしないかなって思ってたけど、小学校で作ったエプロンの代わりに使っていこうかな。
せっかくおそろいなのに使わないのはもったいないし。
「じゃ、今度こそ解散。明日はよろしく!」
「「「「「おー!!!」」」」」
宗介くんの言葉に合わせて拳を高く上げると、一体感が増した気がする。
明日の学園祭、成功させるぞ!
帰宅後は荷物をまとめて早めにベッドに入った。


