恋愛初心者③〜学園祭は驚きがいっぱい!〜


 土曜日の授業終わり。

 今日は調理室で試作の予定だったんだけど、内装担当の永野くんが特別室という所を借りてくれていて、そこを使うことになった。


 普通の教室と同じくらいの広さで、扉を開けると向こう側がすぐ調理スペースになってるんだって。

 でも、校長室と職員室の近くだからみんな予約取りたがらないとか。

 そのおかげで今日だけじゃなくて学園祭までの一週間A組が借りられることになったからその立地に大感謝。


 今回はメニュー班の神田くんがイメージに合いそうな食器類を持ってきてくれて、蘇我くんと咲間くんが材料を持ってきてくれた。

 女給役のわたしたちと、特別室を借りてくれた永野くんは今回試食係。
 宗介くんもこの間の着付け教室のあとに女給役に入ったから、試食係。


 羽場先生と高橋先生は事故が起こらないように調理スペースの方で見張りつつ、つまみ食いを狙うらしい。神田くんに怒られないといいけど……。


 特別室の倉庫から十二人分のイスとテーブルを持ってきて、ランチョンマットをしいたら出てくるまでは少し待機。

「ん〜! 美味しそうな匂い……!」
 最初に声を上げたのは阿部さん。
 朝ごはん食べたのに、わたしも気を抜いたらお腹鳴っちゃいそう。



「お待たせー! 具沢山のピザトーストに、派生のフレンチトースト、オーソドックスなメロンクリームソーダ! 全部自信作だから遠慮せず食べて」


 ふおぉぉぉぉ……!
 料理がキラキラしてる……!

「「「「「いただきます!」」」」」
 まずはクリームソーダから……。


「ん……!」
 美味しい……!
 爽やか……!

 このザクザクした食感はクラッシュアイスだよね! 底の方は大きいから、一つの氷を上にいくにつれて小さくなるように砕いたのかな?


 フレンチトーストは適度な硬さがあるけど、口に入れるとふわっととろけて……! それに、サッパリしてて食べやすい!
 ピザトーストも外はサクサクで、中はモチモチ! 米粉パンなのかな?

「どう? この三種類を提供するっていうので」
「「「「「大賛成!」」」」」
 わたしたちは、神田くんのその問いに間髪入れず答えた。

 絶対大人気になるよ!
 これはわたしも気合い入れて絵を描かないと!

 クリームソーダは桐谷くんからもらった和紙に描き終えたから、次はピザトーストとフレンチトーストを描こう。


「よかったー。あ、そうそう。そのフレンチトーストは弥彦くんレシピね」
 咲間くん、自分で料理のレシピ作ったりできるんだ……!

 フレンチトーストは作ったことないけど、スイーツ系は難しいイメージあるからすごいなぁ……。


「うそ! あたしにも教えてほしい!」
「簡単だから、俺らの分やってみるか?」
「やる!」

 キッチンから聞こえた蘇我くんの声に返事をして、阿部さんが飛んでいった。

 お皿はもうカラッポ。は、早い……。


「全員食べ終わったってことで、オレから簡単なレシピを紹介するよ。基本はその紙に書いてある通りだから、特別こだわったとこだけ」

 ホワイトボードを引っ張り出してきた神田くんがペンを持って前に立つと、蘇我くんがレシピと材料を書いたプリントを配ってくれた。


「まずは一品目のクリームソーダから。氷は丸氷を氷用のノミでクラッシュしたもので、これにもレシピを用意したよ。透明な氷にするために、一度沸騰させてから凍らせるのがポイント」

 透明な氷って、専用の機械とかがなくても自分でも作れるんだ。


「ソーダ部分はかき氷シロップに炭酸水。今回はメロン味で一対四の割合でやってみた。学校から一番近いとこだと、メロン、レモン、イチゴ、ブドウ、ブルーハワイがあったから作りやすいのはこの五種かな」
 なるほど……。
 プリントにメモしておこう。


「次はフレンチトースト。漬け込み時間が短く済む水を使ったレシピを弥彦くんが持ってきてくれて、それ使ってる。焼くときのバターをちょっと多めにするとか、卵の臭み消しにバニラエッセンスを加えたのがポイントかな。ジャムは市販のだけど小皿に盛るとそれっぽい。パンは弥彦くんの実家がパン屋さんだから、そこで四枚切り食パン買ったよ」

 咲間くんの実家って、パン屋さんだったの!? 半年くらいクラスメイトだけど、知らないこといっぱいあるなぁ。


 プリントを見ると、“Bakery Bloom”の文字が。ベーカリー、ブルーム……。
 あ! ニュースで取り上げられてるの見たことあるかも!

 “咲”間だから、ブルームなんだ!


「ピザトーストの方は、米粉パンの四枚切りを使ってる。あとの材料は全部スーパーだね。ただ、市販のピザソースを使うか一から作っちゃうかでちょっと迷ってるんだよねー。オレはいつも自分で作っちゃうから市販のは食べ慣れてなくて判断がつかないんだ」

 ピザソース自作って、すご……。お母さんがデミグラスソース自作する感じかな?


「今日食べたのは?」
「オレのレシピ」

 そうだったの!? お店のソースかと思った!

「タバスコちょっと入ってる」
「わたし、あれすごい好きだったよ」
「俺も。辛いのニガテだけど、ほとんど感じなかったし」
「あたしはもうちょっと辛くてもよかったかな〜。でもすっごい美味しかった!」
「私はピザトースト自体初めて食べるけど、神田くんのレシピで美味しかったよ」


「じゃあピザソースは作る方向で材料買っとくよ。意見くれてありがと。んー。こだわったのはこれくらいかな? 二人はどう?」

「俺は指示に従っただけだから、特には。国産買ったくらい」
「ああ、それ大事だね」
「僕もなし。全部ハルが言ってくれたから」
「じゃあ、メニュー班からは終わり。協力してくれてありがとー」


 試食会は拍手で幕を閉じ、わたしは高揚感そのままに部室で二枚の絵を完成させた。


 これでメロンクリームソーダ、ピザトースト、フレンチトーストの絵は描き終わった!

 あとの絵は欲しいって言ってくれたみんなの意見を聞いて描かせてもらおう。

 これからも頑張るぞ!