恋愛初心者③〜学園祭は驚きがいっぱい!〜


「ゔー……どうしよう……」
 新学期早々、わたしは家で頭を抱えていた。

◇◇◇
 始業式の翌日にあった学級会にて。


「強化合宿お疲れさん。次のイベントは十一月の学園祭になる。内部生はすでに知っているだろうが、今年は外部生が二人もいるからな。最初から説明するぞ」

 そう言った担任の羽場先生に配られたのは、去年までの学園祭の例。


 Aクラスは人数が他の三分の一しかいないんだけど、どのクラスよりも豪華になる。

 それは事前に聞いていたけど、プリントを見て、はたしてこれは中学校の学園祭なのだろうかと思ってしまった。


 去年のAクラスがやったのは、執事喫茶。中学校で飲食っていうのもあんまりない気がするけど、ツッコミを入れるのはここじゃない。


 製菓の専門学校に通ってる生徒を雇って、学園祭に出すためだけのメニューを開発したとか、執事服はオーダーメイドだとか。

 詳細はまだわからないんだけど、どこの貴族!? ってくらい予算が割り振られてるみたいなんだよね……。


 この時間で実行委員も決めるみたいだけど、わたしがなった日には過去に類を見ないほどのショボさになってしまう気がする……。
 立候補とか図々しいことはせずに、裏方を頑張ろう!



「——じゃあ、実行委員は牧野と秦の二人にやってもらうことになりました。はい拍手ー」

 立候補してないのに、選ばれてしまった……。

 実行委員は、男女二人ずつ選ばれる。そしてクラス委員長と副委員長は選べない。


 この前提条件がある時点で候補が二人しかいないA組はわたしになる確率は高かったんだけど……まさか二分の一を引くなんて!


 推薦じゃなくてくじ引きだったから、辞退もできないし……。
 と、とにかくみんなの足を引っ張らないとしないと!

 「空がやるなら相方は俺がやるよ」と立候補してくれたのが内部生の宗介くんだから、いっぱい聞いておきたい。


 あ、宗介くんっていうのは秦宗介くんのこと。わたしの恋人なんだ。努力家で優しくて大人っぽくて、こんな人になりたいっていうわたしの目標にしてる人でもある。


 でも、好きな人と同じ委員会……! と小説のような展開に心がおどったのは一瞬だけ。

 司会進行を宗介くんがやってくれることになったからわたしは黒板にみんなが出した出し物案をまとめてたんだけど……。

 規模が大きすぎてどれもわたしの手に負えなさそうで……。



「大正ロマンなカフェとかどう? あたし、みんなの和服エプロン見てみたい!」


 元気よく手を挙げてそう言ったのは、阿部茜さん。一番最初にできたわたしの女の子友達で、そこにいるだけで空気がぱっと明るくなるような人なんだ。

 大きな洋館に住んでいて、夏休みの間に知ったことだけど、ご両親はファッションデザイナーで、アパレルブランドを経営している。
 しかも基本はオーダーメイドのみ。阿部さんのご両親が作るフルオーダーの一着は三百万くらいするものもあるとか……。


「いいね。ヘアセットとメイクは私もある程度できるし」

 それに同意したのが月乃たまこさん。わたしにとってはファッションの師匠で、面倒見もいいからつい甘えちゃう存在なんだよね。
 月乃さんのおかげで着たい服を少しだけ着こなせるようになったんだ。


「女装ですか……腕がなりますね」

 なぜか女性ものを着る気満々なのは、小役とモデルをしている桐谷悠人くん。

 四月くらいまではクールな人だなって思ってたんだけど、話してみたらすごく楽しい人で、この間あった強化合宿でも助けてもらったんだ。


「「「「「女装!?」」」」」
 口数が多いわけじゃないのに、こうやってみんなを驚かせるのは大体桐谷くんだったりする……。


「悠人が女装したらぼくもやんなきゃいけなくなるから!」

 桐谷くんの一言に青ざめたのは、斎藤椋くん。最近アニメが放送されて、早々に二期の制作も決定した大人気小説『ゆびきりげんまん』を書いた大好きな小説家さん。

 こうして友達として同じクラスにいるのがとんでもないキセキみたいな人なんだ。女装させられるから、お父さん似のベビーフェイスがひそかな悩みなんだとか。


「あはは、頑張れー。大正ロマンならメニューも凝ったの出したいよねー」

 斎藤くんをサラッと見捨てたのは神田晴人くん。わたしと小学校が同じ外部入試組で、社会が誰よりもトクイ。

 色々あって、こ、告白されたこともあるんだけど、お断りしていて、今では友達の距離。
 宗介くんをいじるのが楽しいみたいで、よくからかってるのを見るかな。


「いいね! あたしクリームソーダとか大好き!」
 と、まだ発言してない人もいるのに、大正ロマンなカフェに決定しそうな決まりそうな勢い。


「一言もしゃべってない男子三人組は?」
 と宗介くんが聞いてから放課後の実行委員会で却下されたときの案を出してくれたけど、カフェには賛成らしい。


 決定しても別の案が採用されたとしても秀英学園なら実現できそうなのが怖い……。

 結局放課後の委員会で却下されることはなく、大正ロマンカフェに決定してしまった。


「明日も学級会の時間があるから今日の委員会で決まったことがあったらまとめておいてくれ」

◇◇◇

 最後、羽場先生にそう言われたわたしは帰った後、大正ロマンについて調べてたんだけど……。
 記事を探せば探すほど予算が心配になってきて……。まだ予算については聞いてないんだ……。


「んーー……」

 みんなはたくさん意見を出したいと思うから、収拾つかなくならないようにベースの案出しはしたいなって思ってたんだけど……。


 わたしの金銭感覚じゃむりだぁ……。

 書いては消し、書いては消しを繰り返してくしゃくしゃになったノートのページを破り、気分転換に宗介くんとの交換日記を手に取った。