放課後。
教室を出ると、蓮が廊下で待っていた。
「行こ」
「うん」
いつものように並んで歩く。
今日あったことを話したり、くだらないことで笑ったり。
何も変わらない。
でも、私は時々蓮の横顔を見る。
好きだな。
そう思う。
その気持ちは、もう隠したくないくらい大きくなっていた。
だけど、伝えるつもりはない。
蓮が私を大切にしてくれるのは分かっている。
困ったときには助けてくれる。
私のことをよく見ている。
一緒にいる時間も多い。
でも、それは全部。
幼なじみだから。
そう思っていた。
「結菜」
「なに?」
「今日、静かじゃない?」
「そう?」
「うん」
「ちょっと考え事してた」
「何考えてたの?」
一瞬、答えに詰まる。
「……秘密」
「なんだそれ」
蓮が笑う。
私も笑った。
本当のことなんて言えない。
――蓮のこと考えてた。
なんて。
言えるわけがない。
もし伝えてしまったら。
今までの私たちには戻れなくなるかもしれない。
それだけは、嫌だった。
