昼休み。
友達と話していると、教室の後ろから蓮がやってきた。
「結菜」
「ん?」
「今日、帰る?」
「帰るよ」
「じゃあ、待ってる」
「うん」
それだけの会話。
でも、私は嬉しくなった。
ずっと当たり前だったやり取り。
放課後になれば一緒に帰る。
朝も一緒に歩くことがある。
何かあれば連絡する。
それが、私たちの日常だった。
友達が蓮の背中を見ながら言う。
「結菜たちって、本当に仲いいよね」
「そうかな?」
「うん。いつも一緒にいるじゃん」
私は少し笑った。
「幼なじみだからね」
その言葉を口にすると、不思議なくらいしっくりきた。
そうだ。
蓮が私と一緒にいてくれるのは、幼なじみだから。
小さい頃からずっと一緒にいるから。
きっと、それだけ。
それなのに。
自分が蓮を好きだと分かってから、その「幼なじみ」という言葉が少しだけ苦しくなった。
私は蓮と一緒にいたい。
もっと近くにいたい。
でも。
この気持ちを伝えたら、今までの関係が変わってしまうかもしれない。
今までみたいに笑えなくなったら。
一緒に帰れなくなったら。
そんなの、嫌だった。
だから私は、何も言わない。
この気持ちは、自分の中にしまっておく。
それが一番いいと思っていた。
