家の近くまで来る。
いつもの帰り道。
いつもの景色。
いつもの蓮。
「じゃあ、また明日」
「うん。また明日」
手を振って、蓮と別れる。
少し歩いたところで、私は振り返った。
蓮はもう前を向いて歩いている。
その背中を見ながら、今日のことを思い出す。
指先が触れたこと。
すぐ近くで声を聞いたこと。
後ろから手を伸ばされたこと。
並んで歩いたこと。
どれも、本当に小さなことだった。
特別なことなんて、何もない。
それなのに。
思い出すだけで、胸がいっぱいになる。
私は、自分の頬に手を当てた。
まだ少し熱い気がする。
「……やっぱり好きだな」
小さく呟く。
私は蓮が好きなんだって。
それなのに。
好きだと分かってからも、毎日のように何度も思う。
会えたら嬉しい。
近くにいたら嬉しい。
名前を呼ばれたら嬉しい。
優しくされたら、もっと好きになる。
そして今日。
近くにいるだけで、こんなにもドキドキした。
――好きって、こういうことなのかもしれない。
何か特別なことがなくても。
ただ隣にいるだけで嬉しくて。
少し近づいただけで、心臓が速くなって。
もっと一緒にいたいと思ってしまう。
結菜はもう一度、蓮の背中が見えなくなった道の先を見つめた。
「明日も、会いたいな」
その気持ちは、もう迷いじゃなかった。
私は本当に、蓮が好き。
そう思うほど。
明日が、もっと楽しみになった。
