仕事が終わる頃には、教室に残っている人も少なくなっていた。
窓から差し込む夕方の光が、机の上をオレンジ色に染めている。
「終わったな」
蓮が教室を見渡す。
「うん」
鞄を持って、教室を出る。
廊下を並んで歩きながら、私は何度も隣を見そうになるのを我慢した。
でも。
結局、見てしまう。
蓮はいつもと変わらない。
歩く速さも。
話し方も。
私に合わせてくれるところも。
全部、今までと同じ。
なのに。
私の中では、何もかもが違って見える。
「今日、静かじゃない?」
「そう?」
「うん」
蓮が私の顔を覗き込むように見る。
また、距離が近い。
「……蓮が近いから」
思わず口に出してしまった。
「え?」
「……なんでもない!」
慌てて前を向く。
蓮は少し笑った。
「変なの」
「蓮のせいだから」
「俺?」
「……なんでもないってば」
恥ずかしくて、歩く速度を少しだけ速める。
すると、後ろから蓮の声がした。
「待って」
その声だけで、また嬉しくなる。
私は足を止めた。
蓮が隣に並ぶ。
「急に速くなるなよ」
「……ごめん」
「別にいいけど」
そう言って、蓮がいつものように歩幅を合わせてくれる。
その優しさに、また胸がきゅっとなった。
