蓮が黒板のほうへ向かう。
私はその後ろをついていった。
黒板消しを取ろうとしたとき、蓮も同じタイミングで手を伸ばした。
「あ」
指先が、ほんの少し触れる。
すぐに離れただけなのに。
「……」
心臓が、どくんと大きく鳴った。
「結菜?」
「な、なに?」
「いや。黒板消し」
蓮が少しだけ首を傾げる。
「あ、うん。どうぞ」
慌てて手を引っ込めると、蓮が黒板消しを取った。
「先使う?」
「大丈夫」
自分でも分かるくらい、声が少し変だった。
蓮は気にした様子もなく、黒板を消し始める。
私はその横で、掲示物を片付ける。
並んで立っているだけ。
それなのに、肩が近い。
少し動けば触れそうなくらいの距離。
前なら、何も思わなかったのに。
今は、その距離が気になって仕方がない。
蓮が動くたびに、視線がそっちへ向いてしまう。
横顔。
髪。
手。
そして、時々聞こえる小さな声。
全部が気になる。
――好きな人だから。
そう思うと、また胸が熱くなった。
