家の近くまで来る。
雨はまだ降っていた。
「じゃあ、また明日」
「うん」
傘から出る。
その瞬間、少しだけ距離が離れた。
さっきまで近かったのに。
それだけで、少し寂しく感じる。
「蓮」
「ん?」
「今日はありがとう」
「別に」
「でも、助かった」
「ならよかった」
蓮はそう言って、いつものように笑った。
私はその顔を見ながら思う。
蓮は何も変わっていない。
昔から優しい。
昔から私を気にかけてくれる。
昔から、一緒に帰ってくれる。
変わったのは。
きっと私。
今までなら「ありがとう」で終わっていたことが。
今は、ずっと心に残っている。
蓮が優しくしてくれるたび。
嬉しくなる。
もっと好きになる。
そして、少しだけ怖くなる。
こんなに好きになってしまったら。
もし、この気持ちが蓮に知られたら。
今までみたいにいられなくなるんじゃないか。
そんな不安が、初めて胸に浮かんだ。
「……好きって、大変なんだ」
小さく笑う。
でも。
それでも私は、蓮の優しさが嬉しかった。
家へ向かいながら、さっきまで隣にいた蓮を思い出す。
今までと同じ帰り道。
今までと同じ蓮。
なのに。
好きだと気づいた私には、全部が少しだけ特別だった。
