雨の音を聞きながら、二人で歩く。
傘に当たる雨の音が、いつもより大きく感じる。
「蓮」
「ん?」
「傘、もっと真ん中でいいよ」
「いい」
「でも蓮が濡れる」
「俺は平気」
そう言って、蓮はまた傘を私のほうへ寄せる。
そのたびに、肩の距離が近くなる。
私はどうしていいか分からなくなって、前だけを見る。
「……結菜」
「なに?」
「顔赤くない?」
「雨のせい!」
「雨?」
「そう!」
蓮が少し笑う。
「変なの」
「蓮のせいだから」
「俺?」
「……なんでもない!」
慌てて前を向く。
言えるわけがない。
蓮が優しくするたびに、嬉しくて困っているなんて。
好きになったから。
今までなら何とも思わなかったことが、全部特別になってしまった。
雨の日に傘を貸してくれることも。
私が濡れないようにしてくれることも。
歩く速さを合わせてくれることも。
全部、嬉しい。
「……好きって、こういうことなのかな」
小さく呟いた。
雨の音に紛れて、蓮には聞こえなかったみたいだった。
