放課後。
私は教室で帰る準備をしていた。
窓の外を見ると、雨が降り始めている。
「うわ……」
傘を持ってきていない。
どうしようかと考えていると、机の横に蓮が立った。
「傘ない?」
「うん」
「やっぱり」
「やっぱりって何?」
「朝、天気予報見てたから」
そう言って、蓮が自分の傘を開いた。
「一緒に入ってく?」
「……いいの?」
「濡れるだろ」
当たり前みたいに言う。
私は少しだけ迷ってから、頷いた。
「じゃあ……お願い」
教室を出る。
昇降口で傘を開く。
蓮が持つ傘の下に入ると、自然と距離が近くなる。
肩が触れそうなくらい。
「こっち」
蓮が少しだけ傘を私のほうへ傾ける。
「蓮、そっち濡れてるよ」
「大丈夫」
「でも……」
「結菜が濡れるよりいい」
その言葉を聞いた瞬間。
胸が大きく鳴った。
前にも似たようなことを言われたことがある。
昔なら。
「蓮って優しいな」
それだけで終わっていた。
今は違う。
好きな人にそんなことを言われたら。
意識しないほうが無理だった。
