家の近くまで来る。
いつもの分かれ道。
「じゃあ、また明日」
「うん。また明日」
蓮が手を振る。
私も手を振り返す。
少しずつ離れていく背中を見ながら、私は昨日とは違うことを考えていた。
昨日までは。
「明日も会える」
それが嬉しかった。
今は。
「明日も好きな人に会える」
そう思う。
同じ「会える」なのに、意味が全然違う。
家に帰って、ベッドに座る。
今日一日を思い返してみる。
朝、会えたこと。
名前を呼ばれたこと。
隣で歩いたこと。
数学を教えてくれたこと。
笑ってくれたこと。
心配してくれたこと。
全部、今までにもあったこと。
でも今日からは。
その一つ一つが、宝物みたいに思える。
「好きだと気づいたら……こんなに変わるんだ」
少し恥ずかしい。
でも、不思議と嫌じゃなかった。
むしろ。
もっと蓮のことを知りたい。
もっと話したい。
もっと一緒にいたい。
そんな気持ちが、どんどん大きくなっていく。
私は枕を抱きしめながら、目を閉じた。
明日も会える。
それだけで、明日が楽しみになる。
昨日までと同じ毎日。
同じ幼なじみ。
同じ帰り道。
なのに。
私の中ではもう、何もかもが違って見えていた。
