昼休み。
私はいつものように蓮と話していた。
「今日の数学、難しかったよな」
「うん。最後の問題分からなかった」
「あとで見せようか?」
「いいの?」
「別に」
いつもなら、何気ない会話。
でも今日は。
蓮が私のノートを覗き込むために少し近づいただけで、心臓が跳ねた。
「ここ」
「……うん」
「この式、先にこれやればいい」
「なるほど」
説明してくれる蓮の横顔を見る。
近い。
睫毛とか。
髪の毛の感じとか。
そんな細かいところまで目に入ってしまう。
「結菜?」
「え?」
「聞いてる?」
「聞いてる!」
「ならいいけど」
蓮が笑う。
私は慌ててノートを見る。
「……もう」
好きだと分かってから、こんなにも困るなんて思わなかった。
今までなら、もっと普通に話せた。
もっと気軽に近づけた。
なのに今は。
少し近づくだけで緊張する。
名前を呼ばれるだけで嬉しくなる。
「結菜」
「なに?」
「今日、やっぱり変」
「……そうかな」
「うん」
蓮は少し考えてから、優しく笑った。
「まあ、元気ならいいけど」
その一言だけで、胸がいっぱいになる。
心配してくれた。
ただそれだけなのに。
また好きだと思った。
