学校に着いてからも、私は落ち着かなかった。
席について教科書を出していると、前のほうから蓮の声が聞こえる。
それだけで、つい顔を上げてしまう。
友達と話している。
笑っている。
誰かに頼まれて何かをしている。
いつも見ていたはずの姿なのに。
今日は全部が新鮮だった。
「……蓮って、あんな顔するんだ」
今までだって、何度も見てきた。
でも、好きだと分かってから見ると、全然違う。
真剣な顔も。
笑った顔も。
少し眠そうな顔も。
全部好きだと思ってしまう。
「結菜?」
「え?」
友達に呼ばれて、慌てて振り向く。
「さっきから蓮のこと見てない?」
「見てないよ」
「見てたよ」
「……ちょっとだけ」
認めると、友達が笑う。
私は恥ずかしくなって、机の上に視線を落とした。
昨日までなら、ここまで意識しなかった。
でも今は。
目が合うだけで嬉しい。
話しかけてもらえるだけで嬉しい。
それなのに、好きだとバレるのは恥ずかしい。
「これ、結構大変かも……」
恋をしたことなんて、今までなかった。
だから、この気持ちをどうしたらいいのか分からない。
ただ一つ分かるのは。
私は、思っていたよりずっと蓮が好きだったということだった。
