「おはよう、結菜」
「お、おはよう」
いつも通りに挨拶する。
ただそれだけなのに、声が少し上ずった。
蓮が不思議そうに私を見る。
「どうした?」
「何が?」
「なんか変」
「変じゃないよ」
「そう?」
「そう!」
少し早口になってしまった。
蓮はそれ以上何も言わず、私の隣を歩き始める。
いつもの距離。
肩が触れそうで触れないくらい。
今までなら気にも留めなかった。
でも今日は。
近い。
すごく近い。
「……」
意識してしまうと、歩き方まで分からなくなる。
手が当たったらどうしよう。
顔を見たら、好きって気持ちがバレるんじゃないか。
そんなことばかり考えてしまう。
「結菜」
「な、なに?」
「今日、変だよ」
「だから変じゃないってば」
蓮が少し笑った。
その笑顔を見て、また胸が騒ぐ。
好き。
昨日までは、この気持ちに気づいていなかった。
でも今は。
笑っているだけで嬉しい。
声を聞くだけで安心する。
隣にいるだけで、心臓が落ち着かなくなる。
こんなにも分かりやすいものだったんだ。
「……好きだと、こんな感じなんだ」
小さく呟いた。
「何か言った?」
「ううん、何でもない!」
慌てて前を向く。
蓮は首を傾げながらも、それ以上は聞かなかった。
