放課後。
最後のチャイムが鳴ると、教室の空気が一気に変わった。
椅子を引く音。
友達同士の笑い声。
帰り支度をする音。
結菜も鞄に教科書を入れながら、何度か教室の入り口を見る。
蓮はまだ来ていない。
今日は少し遅いみたいだった。
急いでいるわけではない。
でも、自然と待ってしまう。
スマホを取り出して時間を確認する。
そのとき、廊下から蓮の声が聞こえた。
「結菜」
顔を上げる。
蓮が教室の入り口に立っていた。
「ごめん、待った?」
「ううん。今終わったところ」
本当は少し前から待っていた。
でも、それを言うのはなんとなく恥ずかしかった。
蓮は結菜の鞄を見て、それから窓の外を見る。
「今日は寄り道する?」
「いいの?」
「時間あるから」
その一言が嬉しかった。
「じゃあ、コンビニ行きたい」
「分かった」
二人で教室を出る。
廊下を歩きながら、結菜は小さく笑った。
昨日までなら、ただの寄り道だった。
今日は違う。
放課後に蓮と過ごせること自体が、楽しみになっている。
そのことを自覚すると、胸の奥が少しくすぐったくなった。
「何笑ってるの?」
隣から声がする。
「え?」
「さっきから嬉しそうだから」
「……なんでもない」
「ふーん」
蓮はそれ以上聞かなかった。
ただ、少しだけ笑っていた。
その横顔を見て、結菜もまた笑った。
