昼休み。
結菜がお弁当を食べ終えてノートを片付けていると、蓮が机の横までやってきた。
「今日、帰りどうする?」
「一緒に帰るよ」
考えるより先に答えていた。
言ったあとで、自分でも少し驚く。
前なら、蓮から聞かれるまで特に何も考えていなかった。
今は、当然のように「一緒に帰る」と思っている。
「じゃあ、待ってる」
「うん」
蓮はそれだけ言って戻っていった。
結菜はその背中を目で追った。
――今日も一緒に帰れる。
それだけで、放課後が少し楽しみになる。
午後の授業が始まってからも、何度か時計を見てしまった。
まだ時間はある。
分かっているのに、早く放課後になってほしいと思ってしまう。
窓の外を見ると、空は明るく晴れていた。
帰り道、どこか寄り道できるかな。
コンビニに行くのもいい。
公園に行くのもいい。
何もせず、ただ歩くだけでもいい。
蓮と一緒なら、それだけで楽しい気がする。
そんなことを考えているうちに、先生の声が遠く感じられた。
「結菜、聞いてる?」
「えっ?」
慌てて顔を上げる。
教室の何人かがこちらを見ていた。
「聞いてます!」
そう答えると、隣の席の友達がくすっと笑った。
「なんか今日、ずっと嬉しそうじゃない?」
「そう?」
「うん。何かいいことあった?」
結菜は一瞬だけ答えに詰まった。
頭に浮かんだのは、放課後に隣を歩く蓮の姿。
「……別に、何もないよ」
そう答えながらも、頬は少し緩んでいた。
