家へ向かう道を歩きながら、結菜は今日一日のことを思い返していた。
朝、教室に蓮がいなくて少し寂しかったこと。
来た姿を見つけて、安心したこと。
授業中も、休み時間も、何度も姿を探してしまったこと。
昼休みには、いなくなっただけで物足りなく感じた。
放課後は、会えるのを待っていた。
一日の中で、どれだけ蓮のことを考えていたんだろう。
そう思うと、少しだけ怖くなる。
今までずっと一緒だった。
幼なじみだから、近くにいることが当たり前だった。
なのに。
いつの間にか、その「当たり前」が少しずつ変わっている。
ただ隣にいるだけで嬉しい。
名前を呼ばれるだけで嬉しい。
姿を見つけるだけで安心する。
会えないと、少し寂しい。
もっと知りたいと思う。
もっと一緒にいたいと思う。
ひとつひとつは小さな気持ちなのに。
全部集めてみると、思っていたよりずっと大きかった。
結菜は歩きながら、そっと胸元に手を当てた。
鼓動はいつも通りのはずなのに、少しだけ速く感じる。
「……なんでだろ」
答えは分からない。
まだ、分からなくてもいいと思った。
ただ。
蓮のことをもっと知りたい。
もっと一緒にいたい。
そう思っている自分の気持ちだけは、もう誤魔化せなくなっていた。
それが何なのかを知るのは、もう少し先。
結菜はまだ知らない。
この小さな違和感が、いつか自分の中で「好き」という言葉に変わっていくことを。
