一時間目の休み時間。
先生が教室を出ていくと、クラスの何人かが席を立った。
蓮も友達に呼ばれて、教室の前のほうへ移動する。
その様子を、結菜はノートを片付けながら何となく見ていた。
別に、見ようと思っていたわけじゃない。
ただ、視界に入っただけ。
そう自分に言い聞かせる。
蓮は普段、あまり大きな声で話さない。
でも、気を許している相手と話しているときは、少しだけ表情が柔らかくなる。
笑うときも、ほんの少し口元が緩む程度。
その笑顔を見ていると、なぜか嬉しくなる。
昔から知っている顔なのに。
最近になって、知らなかった表情がいくつもあることに気づいた。
昨日だってそうだった。
ゲームをしているときの楽しそうな顔。
負けそうになったときの少し悔しそうな顔。
結菜が上手くできたときに見せてくれた、嬉しそうな笑顔。
思い出すだけで、胸の奥がふわっと温かくなる。
「……蓮って、あんな顔するんだ」
小さく呟いてから、自分でその言葉に驚いた。
今までだって、何度も見ていたはずなのに。
どうして今まで気づかなかったんだろう。
そう考えていると、前のほうにいた蓮がふとこちらを振り向いた。
視線が重なる。
一瞬。
ほんの一瞬だった。
それなのに、心臓が大きく鳴った。
結菜は慌てて手元のノートへ視線を落とす。
顔が熱くなっていくのが分かった。
――やっぱり、変だ。
最近の私は、本当にどうかしている。
