学校に着いてからも、朝の会話が頭に残っていた。
蓮の好きなもの。
苦手なもの。
好きな季節。
今まで知らなかったことを、少しだけ知れた。
それだけなのに、なんだか嬉しい。
昼休み。
私はスマホを見ながら、ふと思った。
「そういえば、蓮って将来何したいんだろ」
幼い頃は、そんなことを考えたこともなかった。
ずっと近くにいると思っていたから。
でも高校二年生になって。
進路とか、卒業とか。
少しずつ「その先」のことを考えるようになった。
放課後。
いつものように一緒に帰りながら、私は聞いてみた。
「蓮って、将来やりたいことある?」
「まだ決めてない」
「そっか」
「結菜は?」
「私も……まだ」
そう答えながら、少しだけ寂しくなる。
高校を卒業したら。
大学や仕事が違えば、今みたいに毎日会えなくなるかもしれない。
前にもそんな話をした。
でも最近は、そのことを考えると前より胸がざわつく。
「でも」
蓮が言った。
「ちゃんと考えないとな」
「うん」
「結菜は?」
「私?」
「やりたいこと」
少し考えてから、私は笑った。
「まだ分からない。でも、楽しいことしたい」
「結菜らしい」
「なにそれ」
笑いながら、蓮の横顔を見る。
もっと知りたい。
今まで知らなかった蓮のことを。
そう思う自分が、少し不思議だった。
