教室に着いてからも、朝のことが頭から離れなかった。
「結菜、今日なんかぼーっとしてない?」
友達に言われて、私は慌てて顔を上げる。
「そう?」
「うん。さっきからずっとニコニコしてる」
「してないよ」
「してるって」
そう言われて、頬に手を当てる。
もしかして。
蓮と一緒に歩けたことが、嬉しかったから?
昨日会えなかった分、今日は会えた。
ただそれだけ。
そう思えば納得できる。
でも、朝の肩が触れた感覚まで思い出してしまう。
「……なんでだろ」
小さく呟いたとき。
教室の前を蓮が通った。
目が合う。
蓮が軽く手を上げる。
私も同じように手を振った。
それだけなのに。
また、胸が少しだけ騒がしくなった。
友達が私の顔を見て、何か言いたそうにしている。
「なに?」
「ううん。なんでもない」
その言い方が少し気になったけれど、私はそれ以上聞かなかった。
今は、それよりも。
さっき目が合ったことが、なんとなく嬉しかった。
