学校までの道を、いつものように歩く。
昨日のことや、週末に見たテレビの話。
そんな何気ない会話をしながら、私は何度も蓮の横顔を見ていた。
「何?」
急に蓮がこっちを見る。
「え?」
「さっきから見てる」
「見てないよ!」
反射的に否定した。
「そう?」
「そうだよ」
蓮は少しだけ笑って、前を向く。
その笑顔を見た瞬間、胸が小さく跳ねた。
最近、こういうことが増えている気がする。
蓮が笑っただけ。
名前を呼ばれただけ。
近くを歩いただけ。
それだけなのに、なぜか気になる。
「結菜」
「なに?」
「今日、眠そう」
「昨日ちょっと遅くまで起きてたから」
「ちゃんと寝ろよ」
「分かってるって」
そう言いながら、また肩が触れた。
今度はどちらも何も言わなかった。
そのまま歩く。
さっきよりも、蓮が近くにいるような気がした。
私は少しだけ歩く速度を落とした。
すると蓮も、自然に合わせてくれる。
そういうところが、昔から変わらない。
なのに。
最近は、その優しさまで少し特別に感じてしまう。
