その週の金曜日。
「結菜、ごめん」
放課後、蓮がそう言った。
「ん?」
「今日、先に帰っていい?」
「……え?」
一瞬、意味が分からなかった。
「今日、用事あるから」
「あ……そっか」
そう言われて、私は少しだけ戸惑った。
蓮が放課後に用事があるなんて、珍しい。
「じゃあ、今日は一人で帰るね」
「ごめん」
「大丈夫だよ」
私は笑った。
「また明日ね」
「……うん」
蓮が教室を出ていく。
私はその背中を見送った。
たったそれだけ。
別に、何も問題ない。
今までだって、毎日一緒に帰っていたわけじゃない。
部活や用事があれば、別々に帰ることもあった。
なのに。
「……なんだろ」
胸の奥が、少しだけ寂しい。
私は鞄を持って、ひとりで教室を出た。
廊下を歩いていると、いつもなら隣にいるはずの人がいないことに気づく。
いつもの帰り道も。
今日はひとり。
「……静かだな」
そう呟いてから、自分でおかしくなった。
いつもなら、こんなこと気にしないのに。
