次の日。
私は朝から、昨日のことを思い出していた。
『かわいい顔』
蓮が言った言葉。
「……」
思い出すたびに、胸が変にざわざわする。
ただの聞き間違いだったのかもしれない。
もしかしたら、本当に言っていないのかもしれない。
でも。
昨日からずっと、頭から離れなかった。
「結菜、おはよ」
「おはよ……」
友達に挨拶を返して、席に座る。
鞄を置いて、教科書を出して。
いつも通りの朝。
なのに。
教室のドアが開くたびに、ついそちらを見てしまう。
蓮、まだかな。
そう思った直後。
「おはよ」
「……!」
蓮が教室に入ってきた。
「お、おはよう」
「何、その顔」
「え?」
「びっくりしてた」
「してないよ」
「してた」
蓮が私の前を通り過ぎる。
そのとき。
「結菜」
「ん?」
「今日、帰る?」
「……うん」
「じゃあ、待ってる」
「分かった」
それだけ。
たったそれだけなのに。
名前を呼ばれた瞬間、胸が小さく跳ねた。
「……」
私は自分の胸元をそっと押さえた。
最近、本当に変だ。
蓮に名前を呼ばれるだけで、嬉しくなる。
前からずっと呼ばれていたのに。
どうして今になって、こんなに気になるんだろう。
