放課後。
終わりのチャイムが鳴ると、私は急いで教科書を鞄にしまった。
「結菜、今日一緒に帰らない?」
友達に声をかけられて、私は少し迷う。
「あ、ごめん。今日は蓮と帰る約束してるの」
「そっか」
友達が笑う。
「じゃあ、また明日ね」
「うん。また明日!」
友達が教室を出ていく。
私はその背中を見送ってから、教室の入り口を見る。
まだ蓮は来ていない。
「……遅いな」
時計を見る。
いつもなら、もう少ししたら来る。
そう思って待っていると。
「結菜」
「……!」
聞き慣れた声。
振り返ると、蓮が教室のドアのところに立っていた。
「ごめん。待った?」
「ううん」
私は鞄を持って立ち上がる。
「じゃあ、行こ」
「ん」
教室を出る。
廊下を歩きながら、私はふと思った。
今日も蓮と帰れる。
ただそれだけなのに。
なんだか、嬉しい。
「何?」
「え?」
「さっきから笑ってる」
「笑ってた?」
「うん」
「……なんでもない」
私は誤魔化すように前を向いた。
蓮は何も言わなかったけれど。
その口元が、少しだけ緩んでいるように見えた。
