家の近くまで来たところで、蓮が足を止めた。
「結菜」
「ん?」
「明日、朝早く来る?」
「え?」
「委員会あるから」
「ああ、そうだった」
「一緒に行く?」
「いいの?」
「うん」
私は笑った。
「じゃあ、お願い」
「分かった」
蓮はそう言って、先に歩き出す。
「蓮!」
「なに」
「明日、寝坊しないでね」
「それ、結菜だろ」
「私はしないもん」
「この前した」
「一回だけ!」
「二回」
「……細かい」
蓮が笑う。
私も笑う。
いつもと同じ。
何も変わっていない。
なのに。
家に帰ってからも、今日のことが頭から離れなかった。
蓮と目が合ったこと。
名前を呼ばれたこと。
隣を歩いたこと。
ただ、それだけ。
「……なんでだろ」
ベッドに寝転びながら、私は小さく呟いた。
今までなら、こんなこと考えなかった。
幼なじみだから。
ずっと一緒にいるから。
それが当たり前だったから。
でも最近は――
蓮の一つ一つの言葉や仕草が、妙に気になる。
その理由を、私はまだ知らなかった。
ただ一つ分かるのは。
明日の朝、蓮と一緒に学校へ行くのが、少し楽しみだということだった。
