いつもの帰り道。
でも、今日は蓮がなかなか家に向かおうとしなかった。
「蓮?」
「もうちょっと歩かない?」
「いいけど……」
いつもなら分かれる道を通り過ぎる。
少し遠回りになる道。
夕方の静かな道を、二人で歩く。
「今日、変だよ」
「そう?」
「うん」
「……結菜」
「なに?」
蓮が立ち止まった。
私も足を止める。
「俺が昨日言ったこと、考えた?」
昨日。
『結菜が思ってるより、結菜のこと好きだよ』
『その「好き」じゃない』
その言葉が頭に浮かぶ。
「……考えたよ」
「どう思った?」
「分からなかった」
正直に答える。
蓮は少し俯いた。
「そっか」
「ごめん」
「なんで謝るの」
「だって、蓮が伝えようとしてくれてるのに、私……」
言葉が続かない。
すると蓮が、ゆっくり私を見る。
「結菜」
「うん」
「俺が結菜にしてること、他の人にもすると思う?」
「え?」
「鞄持ったり、待ったり、好きなもの覚えてたり」
一つずつ数えるように言う。
「毎日一緒に帰りたかったり」
「……」
「少しでも長く一緒にいたかったり」
蓮の声が少しずつ低くなる。
「結菜が他の誰かと仲良くしてたら、気になったり」
胸がざわつく。
「……それは」
「俺、結菜だからしてる」
まっすぐ見つめられる。
逃げられないくらい、真剣な目。
「幼なじみだからじゃない」
心臓が、大きく鳴った。
「じゃあ……何?」
ようやく出した声は、自分でも分かるくらい小さかった。
蓮はしばらく黙っていた。
そして、少し苦しそうに笑った。
「……ここまで言っても、まだ分かんない?」
私は何も言えなかった。
