放課後。
教室に残っていると、蓮が私の机の前に立った。
「終わった?」
「うん。ちょうど終わった」
「じゃあ行こ」
「待って、鞄――」
手を伸ばすより先に、蓮が私の鞄を持つ。
「はい」
「……もう慣れたけど」
「ならよかった」
「よくないよ」
そう言いながらも、私は笑ってしまった。
廊下を歩いていると、蓮が私の歩幅に合わせてくれる。
階段では少し先を歩いて、私が降りてくるまで待っている。
外に出れば、自然に私の車道側を歩く。
今までだって、そうだった。
でも今日は、その一つ一つが妙に気になった。
「ねえ、蓮」
「ん?」
「今日どうしたの?」
「何が?」
「なんか……いつもより優しくない?」
蓮は少し考えるように黙った。
それから、私を見る。
「いつも優しいだろ」
「そうだけど」
「じゃあ、今日も同じ」
「……そうかな」
「そう」
そう言ってから、蓮は少しだけ目を細めた。
「ただ、今日はちゃんと伝えようと思ってる」
「何を?」
「……まだ秘密」
「またそれ?」
「うん」
蓮は笑った。
でも、その笑顔はいつもより真剣だった。
少し歩いたところで、蓮が足を止める。
「結菜」
「ん?」
「俺といて、楽しい?」
「もちろん」
「俺といる時間、好き?」
「うん」
「じゃあ、ずっと俺と一緒にいてくれる?」
「……うん」
迷わず答えた。
だって、それは私も同じだから。
蓮と一緒にいる時間が好き。
これからも一緒にいたい。
そう思っていた。
「……そっか」
蓮が小さく笑う。
その顔は、少しだけ安心したように見えた。
