翌朝。
家を出ると、いつもより少し早く蓮が待っていた。
「おはよ」
「おはよう」
「……遅い」
「え、いつもと同じ時間だけど?」
「知ってる」
そう言って、蓮は私の鞄を持った。
「えっ、自分で持つよ」
「いい」
「昨日も持ってたじゃん」
「今日も持つ」
「なんで?」
「持ちたいから」
また、それ。
最近の蓮は、本当に変だ。
私の鞄を持ったまま、当たり前みたいに隣を歩く。
しかも、いつもより近い。
「蓮、今日近くない?」
「昨日も言ってたな」
「だって近いもん」
「嫌?」
「……嫌じゃないけど」
そう答えると、蓮は満足そうに笑った。
「じゃあいい」
「よくないよ……」
「俺はいい」
そんなことを言いながら歩く蓮は、どこか機嫌がよさそうだった。
学校に着いてからも、それは変わらなかった。
休み時間に私の席まで来たり。
授業の合間に目が合うと笑ったり。
昼休みには、私が食べているものを見て、
「それ、昨日も食べてた」
なんて言ってくる。
「よく覚えてるね」
「結菜のことだから」
さらっと言われて、胸が跳ねた。
「……何それ」
「そのまま」
蓮は笑って、私の頭を軽く撫でた。
「今日、帰るの待ってるから」
「うん」
「絶対、一緒に帰ろ」
「分かった」
その言葉に、蓮は嬉しそうに笑った。
その笑顔を見ていると、私まで嬉しくなる。
だけど。
今日の蓮は、いつも以上に私を見ている気がした。
