帰り道。
いつもなら他愛のない話をしながら歩くのに、今日は蓮が静かだった。
私も何となく話しかけづらくて、隣を歩きながら何度も横顔を見てしまう。
すると、突然。
蓮の手が伸びてきた。
「わっ」
私の手首を軽くつかむ。
「危ない」
前を見ると、歩道の端に自転車が近づいていた。
蓮は私を自分のほうへ引き寄せる。
距離が一気に近くなった。
「……ごめん」
「別に」
そう言いながらも、蓮の手はすぐには離れなかった。
「蓮?」
「……もう少し、このままでいい?」
「え?」
「嫌なら離す」
そう言われて、私は首を横に振った。
「嫌じゃないよ」
すると蓮は、ほんの少しだけ安心したように笑った。
「じゃあ、もうちょっと」
そのまま、ゆっくり歩き出す。
手首をつかんでいた手は離れたけれど、今度は私のすぐ隣を歩いている。
「結菜」
「ん?」
「俺さ」
蓮が前を向いたまま言う。
「結菜が思ってるより、結菜のこと好きだよ」
心臓が大きく鳴った。
「……私も好きだよ」
反射的に答えてしまう。
すると蓮が足を止めた。
「……それ」
「うん?」
「その『好き』じゃない」
「え?」
蓮は私を見た。
少し困ったような、諦めたような顔。
「……やっぱり、まだ分かんないか」
「何が?」
「もういい」
そう言って、蓮はまた歩き出した。
その背中を追いながら、私はずっと考えていた。
蓮は何を伝えようとしているんだろう。
どうして最近、こんなにも私のことを気にしてくれるんだろう。
でも。
それを考えるのが怖くて、私はまた自分に言い聞かせた。
きっと、幼なじみだから。
大切な幼なじみだから。
それだけなんだ。
