一時間目が始まっても、私はなんとなく集中できなかった。
黒板に書かれた文字をノートに写しているはずなのに、気づくと手が止まっている。
昨日の帰り道。
コンビニで買ったアイス。
隣を歩いていた蓮。
そして、何気なく向けられた笑顔。
頭の中に浮かんでは消えていく。
「結菜、そこ違うよ」
小さな声がして、隣の席の友達にノートを指差された。
「え?」
「そこ、先生が今言ったところ」
「あ……」
慌ててノートを見る。
自分でも分かるくらい、授業に集中できていなかった。
「珍しいね。結菜がぼーっとしてるの」
「ちょっと考え事してただけ」
「蓮のこと?」
「……なんで蓮?」
反射的に聞き返すと、友達は不思議そうな顔をした。
「だって、最近よく蓮の話するじゃん」
「そうかな?」
言われてみれば、そうかもしれない。
でも、それは蓮が幼なじみだから。
昔から一緒にいるから、話題に出ることが多いだけ。
そう思った。
「……たぶん、気のせいだよ」
そう答えて、私はまたノートに視線を戻した。
けれど、そのあともしばらく。
頭の片隅には、蓮のことが残っていた。
