学校では、いつも通りの一日が始まった。
授業を受けて、休み時間に友達と話して、お昼になって。
何も変わっていないはずなのに、昨日からずっと蓮の言葉が頭から離れない。
そして昼休み。
教室でお弁当を食べていると、蓮が私の机の横に立った。
「結菜」
「ん?」
「これ」
差し出されたのは、小さなお菓子だった。
「え、なに?」
「好きって言ってたやつ」
「覚えてたの?」
「覚えてる」
当たり前みたいに言って、蓮は私の机に置く。
「ありがと」
「食べて」
「今?」
「うん」
言われるまま袋を開ける。
一口食べると、やっぱりおいしい。
「おいしい」
そう笑うと、蓮も少しだけ笑った。
「よかった」
その顔を見た瞬間、また胸が苦しくなる。
最近の蓮は、私の好きなものをよく覚えている。
私が何気なく言ったことまで覚えていて、こうして当たり前みたいに気にかけてくれる。
「……蓮ってさ」
「ん?」
「私のこと、ほんとによく見てるよね」
「見てるよ」
即答だった。
「ずっと見てきたから」
「……そっか」
その言葉を、私はまた「幼なじみだから」と自分の中で片づける。
ずっと一緒にいたから。
私のことをよく知っているから。
だから、こんなふうにしてくれるんだ。
そう思わないと、怖かった。
「結菜」
「ん?」
「俺がこういうことするの、どう思う?」
「え?」
「嫌?」
「全然嫌じゃないよ」
むしろ嬉しい。
そう思ったけれど、口には出せなかった。
蓮は少しだけ目を細めた。
「……そっか」
嬉しそうなのに、どこか困ったような顔だった。
