帰る時間が近づいてきた。
「もう帰る?」
私が聞くと、蓮は時計を見る。
「……まだいい」
「でも、遅くなるよ?」
「もう少し」
蓮がそう言う。
その言い方が、少しだけ強かった。
私は隣に座ったまま、黙っていた。
「結菜」
「ん?」
「俺といるの、嫌じゃない?」
「嫌じゃないよ」
「じゃあ、好き?」
その言葉に、私は固まった。
「……え?」
蓮も私を見ている。
「俺といるの、好き?」
胸が大きく鳴った。
そんなの。
答えなんて、決まっている。
「……好きだよ」
そう答えると、蓮の表情が少し変わった。
「ほんと?」
「うん」
「じゃあ……」
蓮が何か言いかける。
でも、私は先に笑った。
「だって、幼なじみだもん」
その瞬間。
蓮が黙った。
「……そうだな」
小さく呟く。
私は気づかない。
蓮が少しだけ寂しそうな顔をしていたことに。
私にとっては。
「好き」という言葉に、ちゃんと恋の意味がある。
でも。
蓮にとっては、違うのかもしれない。
私は勝手に、そう思っていた。
