朝、教室に入ると、蓮が自分の席からこっちを見た。
「おはよう」
「おはよう」
私が席に向かうと、蓮が何かを机の上に置いた。
「これ」
「なに?」
見ると、小さなお菓子だった。
「昨日、好きって言ってたやつ」
「あ……」
昨日、本屋の帰りに話していたお菓子。
私が好きだと言ったものを、覚えていたらしい。
「買ってきてくれたの?」
「うん」
「なんで?」
「昨日、食べたいって言ってたから」
「でも、わざわざ?」
「別に」
蓮はそう言って、自分の席へ戻ろうとする。
私は慌てて呼び止めた。
「蓮」
「ん?」
「ありがと」
そう言うと、蓮は少しだけ笑った。
「どういたしまして」
その笑顔を見て、胸が温かくなる。
好きな人に、こんなふうにしてもらえる。
それだけで嬉しい。
でも。
きっと蓮にとっては、そんなに特別なことじゃない。
私たちは幼なじみだから。
昔から、お互いの好きなものを知っている。
だから、覚えていてくれただけ。
私はそう思った。
