本屋を出て、帰り道を歩く。
夕方の空を見上げながら、私は今日の蓮を思い返していた。
朝、待っていたと言われたこと。
「一緒に行きたかった」と言われたこと。
「結菜と行きたい」と言われたこと。
そして。
「もっと嬉しくしてやろうか」と言われたこと。
思い出すたびに、胸が落ち着かなくなる。
蓮は、どうして最近こんなことを言うんだろう。
少し前までなら、何も気にしなかった。
でも今は。
私は蓮が好きだから。
何気ない言葉一つでも、特別に聞こえてしまう。
それでも。
私は自分に言い聞かせる。
蓮は幼なじみ。
私たちはずっと一緒だった。
だから、少しくらい距離が近くても。
一緒にいたいと言ってくれても。
きっと、それは幼なじみだから。
「……そうだよね」
小さく呟く。
その隣で、蓮が私を見る。
「何?」
「ううん。なんでもない」
私は笑った。
蓮は少しだけ不満そうな顔をした。
「最近、なんでもないって言うこと多くない?」
「そうかな?」
「うん」
「じゃあ、蓮も言わないことあるじゃん」
そう言うと、蓮は黙った。
少しして。
「……あるよ」
小さな声で答える。
「え?」
「なんでもない」
今度は蓮がそう言った。
私は思わず笑ってしまう。
「なにそれ」
「結菜にはまだ言わない」
「えー、気になる」
「そのうち」
そう言って、蓮は前を向いた。
私は笑いながら、その隣を歩く。
その言葉の意味を。
私はまだ知らなかった。
ただ。
最近の蓮が、少しずつ何かを変えようとしていることだけは。
まだ、気づいていなかった。
