本屋では、二人で並んで棚を見ていた。
「これ面白そう」
私が本を手に取ると、蓮が横から覗き込んでくる。
「それ好きそう」
「なんで?」
「結菜、こういうの好きじゃん」
「よく覚えてるね」
「覚えてるよ」
当たり前みたいに言われる。
私は本を戻しながら、少し笑った。
「蓮って、私のことよく覚えてるよね」
「……そりゃ」
蓮が少し言葉を止める。
「結菜のことだから」
「?」
「ずっと見てきたし」
その言葉に、私は少しだけ目を丸くした。
蓮はすぐに別の棚へ視線を移す。
私はその横顔を見ながら考える。
ずっと見てきた。
それはそうだ。
幼なじみなんだから。
小さい頃からずっと一緒にいる。
私だって、蓮のことをたくさん知っている。
好きな食べ物も。
苦手なものも。
最近好きなゲームも。
だから、蓮が私のことをよく知っているのも当然だった。
……そう思っているのに。
「結菜」
「ん?」
「何笑ってんの」
「なんか嬉しくて」
「何が?」
「蓮が私のこと覚えててくれるの」
そう言うと、蓮は少し黙った。
そして。
「……もっと嬉しくしてやろうか」
「え?」
「なんでもない」
蓮は先に歩いていった。
私はその後ろ姿を見ながら、首を傾げる。
最近の蓮は。
やっぱり、少しだけ変だった。
