朝。
いつもの道を歩いていると、前から蓮がやってきた。
「おはよう、結菜」
「おはよう」
いつもの朝。
いつもの挨拶。
……のはずだった。
「今日、ちょっと遅かった?」
「え?」
「いつもより五分くらい」
「そうかな?」
「うん。待ってた」
さらっと言われて、私は少し驚いた。
「待ってたの?」
「うん」
「先に行っててもよかったのに」
「やだ」
「え?」
蓮は少しだけ目を逸らした。
「……一緒に行きたかったから」
胸が、どくんと鳴る。
一瞬、何も言えなくなった。
でも。
すぐに自分の中で答えを出す。
――幼なじみだから。
蓮にとっても、それが当たり前なんだ。
「じゃあ、今日は急いで来ればよかったね」
そう笑うと、蓮も小さく笑った。
並んで歩き始める。
その距離が、いつもより少し近い。
肩が触れそうなくらい。
私は少しだけ意識してしまったけれど、何も言わなかった。
蓮はそのまま、私の隣を歩いていた。
