どっと押し寄せてきたあまりの愛おしさと、突きつけられたあまりにも重い現実に、私は職員室のデスクに手をついたまま、息をすることすら忘れて立ち尽くした。
私は、学校の先生。彼は、まだ未成年の高校生。
どれだけお互いに好きだとしても、このまま何もなかったことにして、今まで通り『恋人』として甘いデートを続けることは、絶対に許されない。
けれど――あの子が私を騙そうとしたんじゃないことくらい、私が一番よく知っている。私の拙い愚痴をいつも自分のことのように真剣に聞いて、優しく支えてくれた彼のあの温もりは、何一つ偽物なんかじゃなかった。
きっと、私に追いつきたくて、必死に嘘の仮面を被ってでも、私の隣にいてくれようとしたんだ。
そう気づいた瞬間、胸の奥が張り裂けそうなほどの愛おしさでいっぱいになった。
だったら、大人の私が彼を冷たく問い詰めて、恐怖で逃げ出させるようなことは絶対にしたくない。
(……信じよう)
私は、胸の前でそっと手を握りしめた。
彼が自分の口から、本当のことを私にお話ししてくれるのを、ずっと、信じて待とう。
そのために、これからはデートを断ることも、金曜日にあのバーへ行くのを我慢することだって、いくらでも耐えてみせる。
私は溢れそうになる涙をグッと堪え、名簿のプリントをそっとデスクに戻すと、静まり返った職員室を後にした。窓の外の夕日が、私の決意を静かに見守るように、校舎をオレンジ色に染め上げていた。
***
「おい航平、さっきからずっと上の空だけど、中間試験の赤点の心配でもしてんのか?」
月曜日の昼休み。いつものように屋上へと続く階段の踊り場で、購買の焼きそばパンを齧りながら、大輝が呆れたように俺の顔を覗き込んできた。
「……え?ああ、いや、別に赤点は大丈夫だけど」
「嘘つけ。フォーメーション図描くフリして、ノートの余白に糊のシミ作ってたの俺は知ってんだからな。プリント貼るのに必死すぎて頭パンクしたか?」
大輝がいつものようにニヤニヤしがら俺の脇腹を小突いてくる。俺は首元が少し伸びかけた味気ないロゴTシャツの襟元を引っ張りながら、生返事を返すのが精一杯だった。
結衣さんと付き合い始めて二ヶ月。
私は、学校の先生。彼は、まだ未成年の高校生。
どれだけお互いに好きだとしても、このまま何もなかったことにして、今まで通り『恋人』として甘いデートを続けることは、絶対に許されない。
けれど――あの子が私を騙そうとしたんじゃないことくらい、私が一番よく知っている。私の拙い愚痴をいつも自分のことのように真剣に聞いて、優しく支えてくれた彼のあの温もりは、何一つ偽物なんかじゃなかった。
きっと、私に追いつきたくて、必死に嘘の仮面を被ってでも、私の隣にいてくれようとしたんだ。
そう気づいた瞬間、胸の奥が張り裂けそうなほどの愛おしさでいっぱいになった。
だったら、大人の私が彼を冷たく問い詰めて、恐怖で逃げ出させるようなことは絶対にしたくない。
(……信じよう)
私は、胸の前でそっと手を握りしめた。
彼が自分の口から、本当のことを私にお話ししてくれるのを、ずっと、信じて待とう。
そのために、これからはデートを断ることも、金曜日にあのバーへ行くのを我慢することだって、いくらでも耐えてみせる。
私は溢れそうになる涙をグッと堪え、名簿のプリントをそっとデスクに戻すと、静まり返った職員室を後にした。窓の外の夕日が、私の決意を静かに見守るように、校舎をオレンジ色に染め上げていた。
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「おい航平、さっきからずっと上の空だけど、中間試験の赤点の心配でもしてんのか?」
月曜日の昼休み。いつものように屋上へと続く階段の踊り場で、購買の焼きそばパンを齧りながら、大輝が呆れたように俺の顔を覗き込んできた。
「……え?ああ、いや、別に赤点は大丈夫だけど」
「嘘つけ。フォーメーション図描くフリして、ノートの余白に糊のシミ作ってたの俺は知ってんだからな。プリント貼るのに必死すぎて頭パンクしたか?」
大輝がいつものようにニヤニヤしがら俺の脇腹を小突いてくる。俺は首元が少し伸びかけた味気ないロゴTシャツの襟元を引っ張りながら、生返事を返すのが精一杯だった。
結衣さんと付き合い始めて二ヶ月。

