(……待てよ。もしかして、大輝のやつ……)
脳の裏側で、パチリと火花が散った。
小学校の頃からずっと三人で一緒にいた。家族みたいな距離感だった。だからこそ、大輝は完全に、夏海の気持ちを読み違えているんじゃないだろうか。
夏海が急にハーフアップにしてきたり、いつもより服を大人っぽくしてきて、俺の服の変化に過剰に拗ねていたあの姿を見て、大輝は「夏海は航平のことが好きなのに、航平は別の女教師に夢中になっていて、夏海が失恋して可哀想だ」と、大いなる大勘違いをしているのでは……?
俺があまりの衝撃に呆然としていると、大輝は「やれやれ」と小さく肩をすすめて立ち上がった。
「マックで待たせてるから、早く着替えて帰るぞ」
ぶっきらぼうにそう言って部室へ歩き出す親友の背中を見つめながら、俺はとんでもない「勘違いの連鎖」に、顔が熱くなるのを感じていた。
大輝は、夏海が俺を好きだと思っている。夏海は、大輝が好きなのに叶わないとハナから諦めている。そして俺は、その二人に背中を押されながら、学校の先生に正体を隠して恋人になっている。
何なんだよ、これ。全部、めちゃくちゃじゃねえか。
その滑稽なすれ違いに苦笑いしそうになると同時に、俺の胸の奥には、冷たい鉄の塊のような罪悪感が、一気にせり上がってきた。
周りのみんなが、こんなにも俺のことを真剣に心配して、傷ついて、不器用な想いを抱えているのに。俺は、大好きな結衣さんにだけは、未だに最低な大嘘を突き通したまま、自分だけが恋人の幸せを貪っている。
――だけど、そんな胸の痛みも、週末に結衣さんの姿を見つめた瞬間、一瞬でどこかへ吹き飛んでしまうのが、俺のずるくて未熟なところだ。
付き合って二ヶ月が経った十月の週末。
駅前で待ち合わせた結衣さんは、清楚な白い長袖のブラウスに、歩くたびにふわっと広がる紺色のスカートを合わせていた。
付き合いたての頃のような遠慮はもうなくて、人混みに入った瞬間、結衣さんは当然のように俺の隣にぴったりと身体を寄せ、俺の大きな手のひらに自分の細い指先をすんなりと絡めてきた。ぎゅっと恋人らしく握り直されるたび、俺は慣れない幸福感と愛おしさで、やっぱり耳の裏を熱くしてしまう。
「航平くんの手、やっぱりすごく硬くて男の子らしいね。サークル、本当に頑張ってるんだなぁ」
脳の裏側で、パチリと火花が散った。
小学校の頃からずっと三人で一緒にいた。家族みたいな距離感だった。だからこそ、大輝は完全に、夏海の気持ちを読み違えているんじゃないだろうか。
夏海が急にハーフアップにしてきたり、いつもより服を大人っぽくしてきて、俺の服の変化に過剰に拗ねていたあの姿を見て、大輝は「夏海は航平のことが好きなのに、航平は別の女教師に夢中になっていて、夏海が失恋して可哀想だ」と、大いなる大勘違いをしているのでは……?
俺があまりの衝撃に呆然としていると、大輝は「やれやれ」と小さく肩をすすめて立ち上がった。
「マックで待たせてるから、早く着替えて帰るぞ」
ぶっきらぼうにそう言って部室へ歩き出す親友の背中を見つめながら、俺はとんでもない「勘違いの連鎖」に、顔が熱くなるのを感じていた。
大輝は、夏海が俺を好きだと思っている。夏海は、大輝が好きなのに叶わないとハナから諦めている。そして俺は、その二人に背中を押されながら、学校の先生に正体を隠して恋人になっている。
何なんだよ、これ。全部、めちゃくちゃじゃねえか。
その滑稽なすれ違いに苦笑いしそうになると同時に、俺の胸の奥には、冷たい鉄の塊のような罪悪感が、一気にせり上がってきた。
周りのみんなが、こんなにも俺のことを真剣に心配して、傷ついて、不器用な想いを抱えているのに。俺は、大好きな結衣さんにだけは、未だに最低な大嘘を突き通したまま、自分だけが恋人の幸せを貪っている。
――だけど、そんな胸の痛みも、週末に結衣さんの姿を見つめた瞬間、一瞬でどこかへ吹き飛んでしまうのが、俺のずるくて未熟なところだ。
付き合って二ヶ月が経った十月の週末。
駅前で待ち合わせた結衣さんは、清楚な白い長袖のブラウスに、歩くたびにふわっと広がる紺色のスカートを合わせていた。
付き合いたての頃のような遠慮はもうなくて、人混みに入った瞬間、結衣さんは当然のように俺の隣にぴったりと身体を寄せ、俺の大きな手のひらに自分の細い指先をすんなりと絡めてきた。ぎゅっと恋人らしく握り直されるたび、俺は慣れない幸福感と愛おしさで、やっぱり耳の裏を熱くしてしまう。
「航平くんの手、やっぱりすごく硬くて男の子らしいね。サークル、本当に頑張ってるんだなぁ」

