だけど、俺が髪に触れて確かめていると、急に「月曜日なんて本当につまんない」とそっぽ向いて不機嫌になったりする。女の子の情緒というのは、サッカーのフォーメーションより複雑で掴みどころがない。
クラスは違うが、こうして毎日のように三人で登校する時間は、俺にとって『高校生の日常』そのものだった。
昔から家族みたいな距離感で一緒にいる。だからこそ、俺が毎週金曜日バーに通っていること、もとより他校の教師に惚れているなんてことは、絶対に知られるわけにはいかない相手でもあった。もちろん、大輝はなんとなく例外だ。
***
そうして迎えた金曜日の夜は、大きな波乱もなく緩やからに過ぎていった。
新しく用意した白いカットソーをチャコールグレーのシャツに合わせ、バーのドアを開けたけれど、結衣さんはいつも通り、少し疲れた顔でジントニックを美味しそうに飲んでいた。
「昨日部活でさ、あの子がまた生意気なこと言ってね」なんて、嬉しそうに天才部員の愚慢をこぼす、結衣さんの横顔を俺は大学生の微笑みを貼り付けたまま見つめていた。
大きな進展があったわけじゃない。だけど、そんな何事もない時間が、今の俺にはひどく贅沢で、狂おしいほど愛おしかった。
***
「――あ、航平。そこ、右から一枚ディフェンスきてる!」
翌、土曜日の昼下がり。
グラウンドにはスパイクが土を噛む鈍い音が響いていた。
午前中の部活が終わり、居残り練習をしていた俺と大輝は、汗だくのままベンチへと引き揚げる。
「はい、お疲れ様」
ベンチに近づくと、冷えたスポーツドリンクのボトルを二本、両手に持って差し出してくる人影があった。
夏海だ。
土曜日の部活の終わり、俺と大輝が居残り練習をする日は、夏海がなんとなく待ってくれていて、三人で一緒に帰るのがいつの間にか定番コースになっていた。
「サンキュー、夏海。助かる」
大輝がボトルを受け取って一気に喉を鳴らす横で、俺も冷えたキャップを開ける。冷たい液体を喉に流し込みながら、ふと、夏海の服装が目に入った。
いつもの土曜日に三人で帰る時は、動きやすいジーンズにTシャツみたいな少年みたいな格好が多い。それなのに、今日の夏海は少し大人っぽいサマーニットにロングスカートという組み合わせだった。
「夏海、今日どこか行くのか?なんかいつもより服が大人っぽい」
クラスは違うが、こうして毎日のように三人で登校する時間は、俺にとって『高校生の日常』そのものだった。
昔から家族みたいな距離感で一緒にいる。だからこそ、俺が毎週金曜日バーに通っていること、もとより他校の教師に惚れているなんてことは、絶対に知られるわけにはいかない相手でもあった。もちろん、大輝はなんとなく例外だ。
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そうして迎えた金曜日の夜は、大きな波乱もなく緩やからに過ぎていった。
新しく用意した白いカットソーをチャコールグレーのシャツに合わせ、バーのドアを開けたけれど、結衣さんはいつも通り、少し疲れた顔でジントニックを美味しそうに飲んでいた。
「昨日部活でさ、あの子がまた生意気なこと言ってね」なんて、嬉しそうに天才部員の愚慢をこぼす、結衣さんの横顔を俺は大学生の微笑みを貼り付けたまま見つめていた。
大きな進展があったわけじゃない。だけど、そんな何事もない時間が、今の俺にはひどく贅沢で、狂おしいほど愛おしかった。
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「――あ、航平。そこ、右から一枚ディフェンスきてる!」
翌、土曜日の昼下がり。
グラウンドにはスパイクが土を噛む鈍い音が響いていた。
午前中の部活が終わり、居残り練習をしていた俺と大輝は、汗だくのままベンチへと引き揚げる。
「はい、お疲れ様」
ベンチに近づくと、冷えたスポーツドリンクのボトルを二本、両手に持って差し出してくる人影があった。
夏海だ。
土曜日の部活の終わり、俺と大輝が居残り練習をする日は、夏海がなんとなく待ってくれていて、三人で一緒に帰るのがいつの間にか定番コースになっていた。
「サンキュー、夏海。助かる」
大輝がボトルを受け取って一気に喉を鳴らす横で、俺も冷えたキャップを開ける。冷たい液体を喉に流し込みながら、ふと、夏海の服装が目に入った。
いつもの土曜日に三人で帰る時は、動きやすいジーンズにTシャツみたいな少年みたいな格好が多い。それなのに、今日の夏海は少し大人っぽいサマーニットにロングスカートという組み合わせだった。
「夏海、今日どこか行くのか?なんかいつもより服が大人っぽい」

